コロナ禍を経て“進化”した大学の対面講義 UMUを活用した2年間は資産 上智大学東郷教授のブレンディッド・ラーニング

東郷 公德 教授

 

インタビュイー

東郷 公德 (とうごう たかのり)教授

上智大学外国語学部英語学科教授。 専門は英文学(特にシェイクスピア)

著書:『シェイクスピアは楽しい』(上智大学出版、2005年)

 

コロナで大学が休校 オンデマンド授業が必須になりUMUを導入

―UMU導入のきっかけはコロナでしたね。当時の状況を詳しく教えていただけますか?

2020年4月、新型コロナウィルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令され、授業を対面からオンラインに変更する必要に迫られました。大学側からは大学独自のシステムであるLOYOLA 、MOODLEを使い、人数の多い授業はオンデマンド授業にするようにと言われていて、「さて、どうしようか?」と思ったとき、ふとUMUのことを思い出したのです。

UMUはUI(ユーザーインターフェース)が優れていて、何をやるのか、どこにあるのかが誰にでも理解しやすい。学生にとって使いやすいのではないかと考えました。UMUの機能については、緊急事態宣言が発令される1〜2ヶ月前、UMU担当者の方に説明していただいていたので、記憶に新しかったですね。

そこで、2020年4月に新入生に対して実施した「新入生ガイダンス:上智大学外国語学部英語学科新入生オリエンテーション」で、授業に先立ちUMUを使い始めました。

 

 

大学独自のシステムと並行してUMUを利用

―大学独自のシステムとUMU、どのように使い分けされたのでしょうか?

受講生が最初にアクセスする画面として、大学独自のシステムを利用していました。その画面にUMUのリンクを貼り、UMUにログインしてもらう設計にしました。受講生にリンクを伝達するのには大学のシステムを使うより他に方法はありませんでした。敢えてUMUを利用した理由は、オンデマンド授業をするのなら、受講生側だけではなく教員側にも、UMUの方が利便性が高いと考えたからです。

 

―UMUの魅力はどこにあるとお考えでしょうか?

UMUの魅力は、容量の大きさ、画面の見やすさ、サムネイルがカスタマイズできることにあると思います。

私はシェイクスピアが専門で、授業中に「ロミオとジュリエット」など戯曲作品の舞台映像や映画版を紹介をすることもあります。当時、大学の独自システムには20MBしか容量がなく、直接動画をアップロードするのは現実的ではありませんでした。その点、UMUには1GBの容量があり、余裕をもって動画をアップロードできるので助かりました。

画面の見やすさも魅力です。UMUは画面のレイアウトが優れており、受講生に操作の説明をしなくても、ログインすれば直感的に始められる設計になっていますよね。新入生や日本語を母国語としない受講生もいるので、誰にでもわかりやすいのはいいと思っています。

サムネイルのカスタマイズができることも魅力でした。ホームページなどと同様に、UMU画面のトップに映画や昔の絵、写真を掲載できます。画像があると、一目見ただけでシェイクスピアの授業だとわかります。文字だけでなくビジュアルで伝えられ、複数の画像を一覧化で表示できるので、視認性も高まります。何よりも画面が華やかになり、受講生の学習意欲をかき立てる効果があると感じました。 

また新入生ガイダンスなど、授業以外の面でも、必要な情報を見やすく整理して大量に提示できるので、非常に有り難く利用させて頂きました。

 

マイクロラーニングを意識したコース設計

―コース設計で工夫していた点はありますか?

マイクロラーニングを意識しました。動画をアップロードするとき、5~15分くらいの長さで作成するように工夫していました。授業の動画を長時間視聴し続けると集中力が保てず、受講生にとってはきついのではないかと思ったのです。

また、「重要なポイントだけを学びたい」というニーズに応えられるようにという思いもありました。受講生が復習するとき、30分の動画からポイントを見つけるのは大変です。動画が短ければ、ポイントを探しやすくなるし、必要なところだけをさっと見ることができます。

 

―集中力が保てるようにと考えられたんですね。60分間学習を行うよりも、15分間の学習を3回繰り返した方が、定着・集中力に効果があるという実験結果もあります。マイクロラーニングの利点を理解して、設計されていて素晴らしいですね。

また、1コマの授業に対し、予習の教材、当日の教材、復習の教材の全てが一画面で一覧になるように設計しました。基本的にオンデマンド授業は自習だと思っているので、自習しやすいことを軸に考えました。

 

―予習、授業当日、復習が一覧化されていたら、学習者は何をやればよいかわかりやすいですね。実際にコンテンツをつくってみて、大変だったことはありますか?

対面授業とまったくつくりが違うので、もちろん大変な面も多々ありました。ただ、短い動画を作成することは、教員側にもメリットがあると気がついてからは変わりましたね。メリットに気がついてからは、コンテンツをつくればつくるほど後から楽になると、モチベーションが上がりました。

たとえば、シェイクスピアの英語を読むうえで必要となる文法事項があります。私はシェイクスピアの授業を複数担当しているので、文法事項の動画を1本撮れば、複数の授業に動画を使いまわすことができます。

 

―複数の授業で共通する部分は、1本の動画を撮ればよいので、総合的に見て、生産性の向上に繋がったのですね。 

そうです。もし、特定の授業で少し変えた方がよいと思えば、バージョン2を作成していました。対面授業では、同じ内容を毎回伝えていたので、その点では生産性が上がりました。

受講生においても、シェイクスピアの授業を複数受講している場合、同じ説明を何度も聞かなくて済むので、時間を有効に使えたのではないでしょうか。

 

―他に工夫された点はありますか?

オンデマンド授業というと、録画された動画を視聴したり、資料を読むだけで終わりがちです。しかし、それでは学習が定着しづらいので、オンデマンドでありながら、教員と受講生、受講生同士がインタラクティブに意見交換できるようにしました。

2020年度はUMUの質問の機能を使用して、私から「自分の意見を書いてください」と伝えたり、クイズを出したり、と試行錯誤しながらやっていましたね。必ず1回は他の学生のコメントに対しコメントを返すように指示しました。

UMUではすべての受講生のコメントが一覧化され、他の受講生のコメントも読めるようになっています。多様な考え方に触れ、学びを深めるきっかけになったと思います。

オンデマンド授業であっても「情報を得た後、自分が何をどう考えるか」を大切にしてほしかったので、アウトプットする機会を作れたのはよかったです。

  

受講生の多くはデジタルネイティブ世代 「UMUは使いやすい」と反応 

―受講生の大部分は、デジタルネイティブ世代ですよね。実際、受講生がUMUを使ってみた反応はいかがでしたか?

受講生はUMUを問題なく使えたようです。科目修了後のアンケートでは「使いやすい」とのコメントが多かったですね。ただ、一部の受講生からは「なぜすべての情報をMOODLE画面に提示しないのか」といった声も挙がりました。UMUへのログインを手間に感じたようです。

授業の内容をセクション毎に短時間で区切っているので、隙間時間に勉強しやすいという意見もありました。教員によっては、対面授業で教える内容を90分、100分といった長さで録画し、youtubeの限定配信で提供していた方もおられました。

私の授業は5~15分単位なので、集中力を切らさず学べたこと、まとまった時間がなくても少しずつ勉強を進められたことがよかったようです。

また、UMUではすべての必修セッションを完了すると、コース修了後に「証明書」が発行されます。ゲームをクリアしたときにメダルがもらえるように、授業を終了したときに修了証がもらえることで楽しさ、達成感を感じている受講生もいました。

課題はコミュニケーション不足による希薄な関係性

―対面授業とUMUによるオンデマンド授業、主な違いはどこにあるとお考えですか?

できる限りインタラクティブに設計したオンデマンド授業でしたが、受講生との関係づくりの面では、対面授業の方がはるかによいと感じています。教員として、どんな科目でも一番影響を与えられるのは、強い人間関係ができたときです。

情報はオンラインでも十分に伝えられます。しかし、対面授業では、授業後の質問などでコミュニケーションを取ると「こういうことがわかってなかったのか」「私がまったく想像していなかったような考えがあったんだ」という発見があったり、会話のキャッチボールをしながら関係性が育まれたりします。

私自身、担当の教員が大好きだから、一生懸命勉強した経験があります。そういう人間関係をつくるには、やはり対面であることが必要だと感じています。

 

―オンデマンドと対面授業の理解度について、違いを感じましたか?

授業に対する理解度についてはっきり数値化できてないので、何ともいえないのが本音です。科目にもよります。ただ、一概にはいえませんが、成績をつけていて、大きな違いは感じませんでした。

 

再開された対面授業はブレンディッド・ラーニングに進化

―2022年4月から再開された対面授業。2年間のオンデマンド授業を経て、変化はありましたか?

対面授業の再開といえども、コロナ前の授業に戻ったわけではありません。2年間のオンデマンド授業を経て、大きく変化したと感じています。教員生活34年目にして、我ながら進化したなと。

一度オンデマンド授業に振り切ったことで、いろいろなことが言語化、教材化できました。オンデマンド授業で使っていた教材を対面授業でも用いて、新しいスタートを切りました。

例えば、先ほどお話ししたシェイクスピアの英語を読むうえで必要となる文法事項の説明は、予習用あるいは復習用教材として学生に提供しています。特に複数ある講読の授業ではコロナ前では基本的に授業中に英文和訳していたのですが、コロナ後は基本的に和訳も単語の説明もしない方針へ転換しました。

テキストの読解は予習で済ませてもらい、授業中は主にディスカッションをしています。今、授業の準備で時間をかけていることは、質問を5〜7つ考えていくことです。質問は時事的なことも含まれるので、毎年同じ授業にはなりません。たとえ何世紀も前の作品を読んでいるとしても、今を生きる受講生には、常に現代の問題と関連付けて作品の内容を考えてもらうように工夫しています。

 

濃厚接触者への授業は2年間で蓄積したオンデマンド教材

―対面授業が開始された2022年もUMUを利用されたとお聞きしました。どのように利用されたのですか?

コロナ濃厚接触者で出席停止中の受講生への授業は、ハイフレックス(対面授業をZOOMで配信)で行うように大学から推奨されていました。ハイフレックスは受講生にとって対面授業と同じ内容を受講できる利点があります。しかし、教員側としては、メリットよりもデメリットが大きいと感じていました。

ハイフレックスは、目の前の受講生だけでなく、画面の向こうにいる受講生にも気を配る必要があるため、教員の注意力が散漫になりやすく、授業の質が落ちてしまいます。

そこで、授業の質も担保しつつ、出席停止中の受講生がしっかりと勉強できるようにするため、2年間でUMUで蓄積したオンデマンド教材を使用し、ハイフレックスの代わりにオンデマンド授業を活用しています。もちろん、出席できない学生が不利にならないように配慮しています。

 

今後のUMUの活用に向けて

―今後のUMU活用法について教えてください。

対面授業と違い、UMUでは受講生に書いてもらったコメントが蓄積されていきます。リンクさえ提示すれば、前年に同じ授業を受けた先輩たちのコメントを見ることができるので、より多くの視点での学びが得られます。自分の知っている先輩のコメントを見ると、より授業に興味がわくきっかけになるかもしれません。学年を超えた学習者同士の学び合いができるのは、UMUならではなので、チャレンジしてみたいです。

また、対面授業中に質問の機能を使ってみたいですね。リアルタイムで質問を投げかけ、受講生のデバイスから回答をもらい、それを一覧化して受講生に見せていけたら面白い授業になると思います。従来の対面授業では、自ら挙手して教員から指名された受講生しか回答できませんでした。UMUを使えば、1つの質問に対し、全員が回答できます。さらに、即座に回答が共有されると、黙って座っていながら、同じ授業を受けている人がどんな考えを持っているのかを知ることができますよね。大人数の授業であっても、参加型の授業ができたら、受講生も楽しく学べる機会になるのではないでしょうか。

 

―機能的な面で、UMUに期待することはありますか?

成績管理がしやすくなると嬉しいですね。大学教員の仕事は主に2つあります。1つ目は効果的かつ効率的な授業をすること、2つ目は説明責任を果たせるかたちで成績をつけることです。

授業の参加率、コメント数でポイント化した数値をまとめて一覧で確認できると、非常に助かります。また、受講生一人ひとりが履修している科目をまとめられポートフォリオになっていたら嬉しいですね。一人ひとりの学習履歴を可視化できたら理想的です。


 

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