現場単位での「MVV浸透」を軸とした顧客価値向上/事業と社員の成長を両立させる、トランスコスモスの組織開発

木幡 正彦さん

 

トランスコスモス株式会社では、2018年から各事業部門単位でUMUを活用しています。今回紹介するのは顧客のCX(カスタマーエクスペリエンス)戦略立案からWebサイト構築・運用、データ分析までをワンストップで支援する、デジタルインタラクティブ事業本部です。そこには、Webディレクター、エンジニア、データアナリストといった多様な専門性を持つ約3,000名のプロフェッショナルが在籍しています。UMUを導入したことで社内にどのような成果、変化が生まれたのでしょうか。また、今後どのような期待をされているのでしょうか。デジタルインタラクティブ事業本部が、UMU活用を起点に進めてきた、自学・自走の文化醸成から、MVV浸透を軸とした次世代タレントマネジメント構築に至るまでの一連の取り組みについて、同本部でHRBP機能を担うHRマネジメント部の副部長の木幡正彦さんにお話を伺いました。

 

 

企業情報

社名:トランスコスモス株式会社

本社所在地: 〒170-6016 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60

設立年月日:1985年6月18日

資本金:290億6,596万円

ホームページ: https://www.trans-cosmos.co.jp/

「デジタルマーケティングの力で幸せな社会をつくる」ために、従業員満足度向上も目指す

トランスコスモス株式会社は、売り上げ拡大からコスト削減までワンストップでお客様企業の支援を行っています。そのなかのデジタルマーケティングの領域を担当しているのが、デジタルインタラクティブ事業本部です。当本部では「デジタルマーケティングの力で幸せな社会をつくる」というビジョンを掲げております。お客様企業やエンドユーザーに、データを有効活用し、適切なデジタルマーケティングを介したコミュニケーションを図ることで、クライアント企業の事業成長に貢献し、その先にいるエンドユーザーには不自由のないスムーズな購買体験やサービスを提供することを目指しています。

 

当本部では、「サービスマネジメントブランディング」という言葉を用いて、社員が幸せになることが重要と捉えています。これは端的に言うと「従業員満足度が上がれば、必然的に質のいいサービス提供に目が向き、共感できる人材が集まる好循環を醸成できる」という考えで、それをもとにメンバーの満足度向上に対しても全力で取り組んでいます。

 

働く場所や業務内容が異なる組織それぞれに、適切なリソースを提供することが課題

サービスマネジメントブランディングを目指していくなかでは、個々に適した育成や研修が必要です。

 

デジタルインタラクティブ事業本部には、海外も含め約2,800名のメンバーがいます。多数のサービスを抱える事業本部内には組織も数多くあり、各従業員の勤務場所や職種、担当する顧客案件の属性も異なる中で、どのように質の高い教育を均一に提供していくか、私が人材育成に携わり始めた2017年から課題を感じていました。

 

この課題を解決するためのプラットフォームを探していたときに他本部のメンバーがUMUを見つけ、話を聞いた私も可能性を感じました。2018年9月からトライアルを始め、2019年から本格的に利用しています。

 

導入当時(2018年)は、主に以下のような課題がありました。

 

1.部門により求められる研修や学習内容が異なる

2.本社育成部門に各部門へ最適化した研修を提供するリソースが不足

3.本社育成部門で各現場の知財をコンテンツ化するのが困難

 

現場主体の学習を迅速に進められる環境構築

UMU導入の目的は、主に以下の3つです。

 

1.本部全体への学習コンテンツ提供量の最大化・高速化
UMUを介して、各所に散在しているコンテンツを集約し、本部全体への学習提供を加速かつ量を最大化する。

2.拠点への遠隔での研修提供効果を最大化
UMUとオンライン会議システムを組み合わせ、ブレンディッド・ラーニングを根差し、遠隔でも現地参加と同等の満足度を目指す。

3.知財の共有・交流機能の活用で、学び合う環境の実現
育成チームからの一方的な知財提供のみならず、現場から知財提供を行い、学び合う環境をUMU上で構築する。UMUを導入することで、部門ごとに能動的な学習を進める組織にできると考えました。具体的には、各部門に学習管理者を確立し、現場の知財を手軽にコンテンツ化して横展開する、といった当初からの構想がありました。

導入時:UMUで実現した「自走・自学」の文化醸成

2019年度はまず、育成部門の仕掛けをすべてUMU化し、「学習=UMU」として使ってもらうことを第一に進めました。それにより、コンテンツの作成と蓄積が段違いに効率化し、初年度で目標の「量の最大化」と「拠点との差の是正」を解消しました。4〜5名程度の運営体制下で年間100件以上の研修開催を実現しました。

 

2020年度はコロナ禍の影響もありましたが、UMUにコンテンツを移行していたため、リモート研修をスムーズに実現。「コンテンツ配信といえばUMU」と本部内で認知されるようになりました。さらに、社員が「知りたい」「教えたい」を起点にセミナーを開催できる「セミナーファンディング」もUMU上で実現し、まさに「自走・自学」の文化が花開きました。現在では、UMU上に蓄積されたコースは数千にのぼり、誰でも「学び手」として自学自習できるだけでなく、希望すれば自身のナレッジをコンテンツ化して周囲のメンバーに展開する「教え手」にもなれる環境として提供しています。全てのメンバーがコンテンツ作成権限を簡単に申請できるフローが整備されており、現在は約3,000名の組織内で約300名のメンバーに権限付与がなされています。

 

▲セミナーファンディングのサイト(2020年当時)

現在地:なぜ今「MVV」なのか? 次なる課題と新たな羅針盤

「自走・自学」の文化が定着し、個々の成長が加速する一方で、組織では新たな課題感が生じていました。それは多様な専門性を持つメンバー一人ひとりのマインドが、必ずしも顧客や事業の方向性と完全にベクトルが合っているわけではないという点です。個々の能力を最大限に活かしきれず、人的資本が最大化されていない状態が、特に顧客との向き合い方において顕在化していました。

 

この課題に対応するために2024年から同本部が着手したのが「プロジェクト単位のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定」という新たな取り組みです。この施策の背景には「顧客信頼の向上と案件の最大化」という明確な事業目的がありました。MVVとは、そのプロジェクトが「お客様とどう向き合い、どこを目指すのか」を言語化した約束です。この「約束」を果たすためには、当然それにふさわしいスキルやマインドを持った人材が必要になります。そのため、「このプロジェクトで最大の成果を出すために何が必要か」を考える上で、最も重要な“判断基準”がMVVなのです。

 

MVVは、全社や本部といった大きな単位だけでなく、先行していたコンタクトセンター部門の事例も参考に、顧客と向き合う最前線の約200のプロジェクトやチーム単位で策定が進められました。

 

「顧客案件ごとのクライアントワークという性質上、本部全体のMVVから現場単位にブレイクダウンしないと、各メンバーがMVVを自分ごと化するのが難しい。」という状況だったため、各プロジェクトや事業所単位でMVVを作り、お客様との向き合い方を明確にしています。『顧客が自社に求めていることは何か』『顧客が目指す先はどこか』という認識を合わせることで、顧客と自社が共通の目標を持ち、より信頼される関係を目指しています。それがひいては、我々により良い仕事を生み出し、案件最大化につながっていきます。

 

MVVは、個人の成長への動機付けにもなると木幡さんは続けます。「メンバー自身がスキルアップする目的は、そのMVVを実現し、お客様に喜んでもらうため。そして、その結果として自分も評価される。という好循環を作りたいと考えています。」

 

「日々の業務に追われる中で見失いがちな「目的意識」を、顧客との対話を通じて再確認し、言語化する。」MVVは、組織の向かうべき方向を示す、新たな羅針盤なのです。

「MVV」と「スキル」の接続によるタレントマネジメント

このMVVという「思想」を、具体的な「成果」に結びつける仕組みこそが、同本部が並行して進化させてきたタレントマネジメント戦略です。

 

MVVで定義された『あるべき姿(Vision)』や『提供価値(Value)』を実現するために、具体的にどのようなスキルが必要なのか。その問いに答えるのが「キャリアモデル&バッジ制度」です。この制度では、デジタルマーケティングに必要なスキルが15の専門分野に分類され、それぞれに3段階の習熟度が「バッジ」として定義されています。UMUは、このバッジを取得するための学習プラットフォームとして中心的な役割を担い、125以上の専門コースが提供されています。また、2019年よりUMUに蓄積されてきた知財を活用することで、この学習環境を実質2カ月程度という短期間で整えることができました。

 

そしてUMU上でのバッジ取得状況のデータは、タレントマネジメントシステムで人事情報や保有資格と一元管理されています。

 

UMU上での学習提供によりメンバーのスキル獲得を支援し、その学習データを踏まえてタレントマネジメントシステムでメンバーの保有スキル状況を可視化することで、人材ポートフォリオを把握しやすくなります。これにより、多様化するクライアントの要望に対して、最適な人材アサインを加速することにつなげています。

 

MVV浸透強化と今後の展望

HR部門は旗振り役として約200のMVV策定を推進する中、UMUはその浸透プロセスを加速させる基盤環境となっています。取り組みの趣旨を伝える啓蒙コンテンツを配信したり、優れた実践チームを称える表彰や成功事例を共有するプラットフォームとしても活用しています。実際に、当初お客様との関係性に課題があったチームが、MVVを策定して向き合い方を見直した結果、コンディションが好転し、より信頼をいただけるようになったという事例も出てきています。こうしたリアルな好事例をUMUで共有することが、他のチームへの何よりの刺激になっています。

 

MVV浸透の取り組みは、まだ始まったばかりです。今後は、半期ごとの表彰制度などを通じて優れた取り組みを称え、形骸化を防ぎながら、その成果を定点観測していきます。

 

長年の活用で、UMUは単なる学習ツールから、いつでも参照・再利用できる「知の資産」へと変化しました。各部門が自らのMVV実現のために、「過去のコンテンツを今のバージョンにアップデートして使おう」「必要な研修は自分たちでUMUで作ろう」という自律的な動きは、MVVという目的を得て、さらに加速していくでしょう。

 

「自走・自学」から、顧客や仲間と「共創・共振」するステージへ。デジタルインタラクティブ事業本部の挑戦は、これからも続いていきます。

 

木幡さんプロフィール

2008年トランスコスモス株式会社入社。Webディレクター、PMとして大手クライアントのさまざまな業界、案件に携わる。2016年サービス部門の組織長を経験し、育成・知財共有などの現場支援の必要性を強く感じ、2017年に育成・教育を主とした組織を立ち上げる。以後年々対応範囲を拡大し、現在はHRマネジメント部として、採用・オンボーディング・育成・タレントモビリティ・評価制度など一気通貫で担当する。

 


 

大手企業様をはじめとして、全社学習プラットフォームの活用、営業教育、新入社員教育等、さまざまなシーンでUMUをご利用いただいております。

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