テクノロジーによる”練習”が営業力を高める〜Practice Makes Performance〜

新しい時代のラーニングプラットフォーム、UMU(ユーム)を提供するユームテクノロジージャパンです。今回は、テクノロジーによる練習で、営業力を高める方法を、SPIN話法をベースに考察いたしました。

なぜ”練習”なのか

「練習ハ不可能ヲ可能ニス」と、経済学者・社会思想家であり、慶應義塾学長であった小泉信三氏は遺しています。

人の学習・成長において、練習は非常に重要です。
UMUでも、”パフォーマンスラーニング”という考え方を大事にしています。それは、知識を「知っている」だけでは意味がなく、「できる」という状態になってはじめて、ラーニングの意味があるという考え方です。

偉業を成し遂げた人物について調べ上げ、練習の大事さを指摘した「究極の鍛錬」(*1)という本があります。この本が主張しているユニークな科学的考察は、世界的な業績を上げて成功するにの必要なのは、才能ではなく、「究極の鍛錬」に圧倒的な時間を費やすことだそうです。

調査を行った結果、最高レベルに達した人々は、平均的には早熟の兆しが全く見られない一方、練習時間の平均を計算してみると、レベルと練習時間にきれいな相関関係があったそうです。レベルが上になればなるほど努力と鍛練を重ねていたという、当たり前すぎる結論が導き出されたのです。

そして、天才たちは単に練習の量が多いだけでなく、練習の質も高いと本書では述べており、このような「究極な鍛練」は、ある特徴を持つといいます。これらの特徴を踏まえて鍛練を重ねれば、誰もが偉大な業績をあげられるだろうというのが本書の結論です。また、自己実現やビジネスまで「究極の鍛練」は幅広く応用できるとも述べています。

練習はどのようなものが最適なのか

「究極の鍛錬」の特徴的要素は下記のような要素です

・しばしば教師の手を借り、実績向上のために特別に考案されている

・何度も繰り返すことができる

・結果に関し継続的にフィードバックを受けることができる

・精神的にはとてもつらい

・あまりおもしろくない


本の中で、アイススケートの金メダリストの荒川静香さんがオリンピックでメダルをとるまで、2万回の尻もちをつくという例えが出てきます。一流でない選手は自分が既にできるジャンプに時間をつぎ込む一方、トップレベルの選手は自分ができないジャンプにより多くの時間を費やします。

現在の自分のレベルより高い難しいことに挑戦し、ひたすら練習し続けることは「精神的に辛く」、「あまり面白くない」ことです。野球でも、素振りの練習を何万回もすることは、決して楽しい練習ではないでしょう。しかし、こうした基礎的な「究極の鍛錬」こそが、圧倒的な業績を生み出すという考察は、私達にとって、重要な気づきを与えてくれます。

営業力を高めるための、SPIN話法

では、営業力を高めるためにどのような練習をすべきでしょうか。今回は、SPIN話法(*2)という営業手法を練習によって身につけることを考えてみたいと思います。

SPIN話法とは、顧客の潜在ニーズを引き出すヒアリング力を支える営業技法です。1995年にイギリス人のニール・ラッカム氏が考案した話法で、日本でも大きな反響を呼びました。

潜在ニーズは、お客様も気づいていないニーズのことで、営業パーソンがうまく引き出す必要があります。その潜在ニーズを引き出すテクニックがSPIN話法です。
SPIN話法では、次の4つのステップによって、顧客の潜在ニーズを引き出します。
S:Situation Questions 「状況質問」

P:Problem Questions 「問題質問」

I:Implication Questions 「示唆質問」

N:Need-payoff Questions 「解決質問」

上記の頭文字を取ったのがSPINです。
それぞれの質問を簡単にご紹介します。(ご存じの方は読み飛ばしてください)

 

S:Situation Questions 「状況質問」

Situationでの質問の意図は、現状を把握することです。まずは顧客のおかれている状況や環境について客観的な事実をヒアリングします。

例えば、
「現在の採用数はどのくらいでいらっしゃいますか?」
「専任の担当の方はいらっしゃいますか?」
といった質問です。

P:Problem Questions 「問題質問」

Problemでの質問意図は、顧客が抱えるニーズを引き出し、顧客自身に認識していただくことです。顧客の問題や障害、不満を聞き出し、その現状に対してどうように認識していらっしゃるかという顧客の意思・考え・評価をヒアリングします。

状況質問で得た情報をもとに、顧客が困っていると予想される内容の質問をします

例えば、
「採用数は●人とのことですが、それは計画に対して足りていらっしゃいますか」
「専任の担当者がいないとのことですが、○○に関してはどのように対処されていますか?」
といった質問です。

I:Implication Questions 「示唆質問」

Implicationの質問の意図は、Problem Questionsでヒアリングできた潜在ニーズを深掘りし、ニーズを顕在化させることです。潜在的なニーズである問題を放置することで、誰にどんなインパクトがあるのかについて、幅広い観点から聞きます。

例えば、
「採用数がこのままだと、事業プランの達成に影響を与えませんか?」
「専任の担当者を置かないことで、ほかの部署の方に与える影響はいかがですか?」
といった質問です。

N:Need-payoff Questions 「解決質問」

最後、に解決策を提案するための質問をします。Implication Questionsで聞いた、顧客ニーズを満たすことで得られる大きな価値に気づかせ、自社のサービスを選んでもらうための質問をします。

例えば、
「弊社の○○であれば、○○な解決が可能ですが、どのような印象を受けられましたか?」
「○○の課題が解決すれば、どのような良い影響がもたらされると考えられるでしょうか?」
といった質問です。

SPIN話法を身に付けるための練習

SPIN話法は、ぱっと読むと簡単そうですが、「知る・わかる」と「できる」には大きな違いがあります。実際にお客様に対して、対話の中で頂いた情報をもとに、様々な質問を行うのは難しく、すぐに「できる」状態になるのは難しいのが現実です。なので、SPIN話法を営業現場で「できる」ようになるために、「練習」が必要です。

練習をせずに、実践の営業場面、つまりお客様先で試してみて、そのフィードバックを観察しながら、徐々に身に付けていくことももちろんできると思います。しかし、お客様先に行ける機会は限られていますし、お客様によってもニーズ・パターンが異なりますので、習得までに時間がかかってしまうのではないでしょうか。

そこで、SPIN話法を練習する方法について考えてみましょう。

究極の鍛錬で効果的とされていた練習は下記のポイントでした。

1 しばしば教師の手を借り、実績向上のために特別に考案されている

2 何度も繰り返すことができる

3 結果に関し継続的にフィードバックを受けることができる

4 精神的にはとてもつらい

5 あまりおもしろくない

 

上記のポイントを抑えた、SPIN話法の練習方法は、2つ考えられます。

1,ロールプレイング

まず、考えられるのはロールプレイングです。顧客のニーズ情報の設定をあらかじめ決めておき、社内の先輩や同僚の方にお客様役になっていただいて、実際にSPIN話法に従って、質問を投げ掛けながら、潜在ニーズを引き出していく練習を行います。究極の鍛錬の練習のポイントで言えば、(1)教師の手を借り、(3)結果に対してフィードバックをうけることができ、(4),(5)精神的にはつらく、面白くないものでしょう。

この方法は非常に効果的であり、様々な営業の会社で行われている練習方法でしょう。一方で、ロールプレイングの相手役の方に時間を割いてもらったり、顧客情報の設定を作成したりと、手間と工数がかかる練習方法になります。その点で、(2)のポイントである反復練習を行うのは、かなり労力と時間を割くことになってしまうのが難点です。

実際、ロールプレイングをずっとやり続けながら、練習を継続できている営業パーソンは少ないのが現実ではないでしょうか。

 

2,アウトプットトレーニング

もう一つは、一人で行うアウトプットのトレーニングです。SPIN話法のヒアリングの型である「セリフ・定型文」を、発話することで、実際にアウトプットし練習を行うものです。実際に口で発話することがポイントで、さらに、動画でその発話しながら問いかけているセリフを録画してそれを確認することで、練習の精度を高めます。究極の鍛錬のポイントでいうと、(2)何度も繰り返すことができ、(3)セルフフィードバックをかけることができ、(4),(5)精神的にはつらく、面白くないものでしょう。

この方法の良い点では、ロールプレイングと比べて、一人で実施でき、反復ができる点です。一方で、(1)教師の手を借りる (3)他者のフィードバックをうける という点が弱いのが難点です。

この点は、自分で撮影した動画を、他者にシェアし、その動画に対してコメントを貰うことによってカバーすることができるのではないでしょうか。

テクノロジーが練習を加速する

上記の練習方法をさらに加速するために、テクノロジーを活用しましょう。

ロールプレイングは、現在はZOOMやTEAMS、UMUなどのオンライン会議システムを利用することで、オンラインで実施することができます。2020年9月時点では、まだまだ対面での会議は控えられている会社も多い中で、ロールプレイングの練習はオンライン会議システムで行っていく必要があると言えるでしょう。
アウトプットトレーニングについても、iPhoneなどのモバイル端末が活用し、自分で動画を撮影して確認することができます。しかし、加えて、UMUシステムを活用すると、アウトプットトレーニングは劇的に進化します。
UMUアプリでアウトプットトレーニングの動画を撮影することで、AIが表情、音声、ジェスチャー、コメントを解析し、評価を行います。練習者は、その評価を参考にしながら、セルフフィードバックの質を高めることができます。
さらに、UMUで撮影した動画を上司・先輩や同僚にシェアし、上司や同僚からそのアウトプットトレーニングの動画に「いいね」や「コメント」をもらうことができます。
これができれば、まさに、アウトプットトレーニングの難点であった、(1)教師の手を借りる (3)他者のフィードバックをうける という点も克服されます。

テクノロジーによって、練習を加速させることが、「知っている・わかる」を「できる」の状態に変え、営業力の向上、業績の向上につながるのです

番外編:SPIN話法を実現するための枕詞

SPIN話法は、ぐいぐいと顧客へ質問をぶつけていく話法ですので、聞きにくいことを聞く話法でもあります。関係性の薄い顧客にもSPIN話法を行うためには、営業の枕詞・マジックワードが役に立つことがあります。そんなマジックワードをきっかけとして使いながら、ヒアリングを進めるために、使えそうなワードを10個選んでみました。

ぜひ、アウトプットトレーニングで下記の言葉を枕詞にはさみながら、SPIN話法を磨いてみてください。

1.ちなみに・・・

「ちなみに、ご予算はおいくらなんですか?」
という形で、話の腰を折らずに相手に聞きたいことが聞ける汎用性の高い言葉です

2.極論なんですけど・・・

「極論なんですけど、XXが▲▲だったら、いかがですか」
顧客に仮定の質問をぶつけて、潜在ニーズを引き出すのに重宝します。

3.変な話・・・

「変な話、もしXXが▲▲だったとしたら、実際いかがですか?」

4.導入する、しないは別としてですよ・・・

「導入する、しないは別としてですよ、こういうXXがあったら、実際、いかがですか?」
顧客の本心を引き出したり、別の課題を引き出すために使うことができます

5.ご存知だと思うんですけど・・・

「ご存知だと思うんですけど、今ご利用いただいているXXって、2022年で保守が切れるんですよ」
お客様の環境・状況を否定・更新するような、新しい情報をお伝えする時に利用できます。

6.ぶっちゃけ、・・・

「ぶっちゃけ、今のご状況って100点満点中、何点くらいですか?」
ぶっちゃけ、というだけで少しだけ本心が聞き出しやすくなります。
これで70点くらいかなぁ、と返ってきたら、ちなみに、その30点分の理由をお伺いできますか?と聞くことができます。

7.お客様からよく聞く話なんですが・・・

「お客様からよく伺う話なのですが、御社もXXや▲▲でお困りですか?」
業界共通の課題をヒアリングする時などに、利用できます。
まるで自分が聞いているわけではないような聞き方をすることができます。

8.私の想像(妄想)なのですが、・・・

「私の妄想なのですが、XXって▲▲なご状況なのではないですか?」
仮説をぶつけて聞いてみるときに、その仮説を言いやすくなります

9.間違っていたら言ってほしんですけど・・・

「間違っていたら言ってほしんですけど、▲▲をXXにしたら、課題って解決されますか?」
顧客に仮説ベースの提案やヒアリングをかける時の枕詞です
類語:私が不勉強で申し訳ないのですが・・・

10.怒らないで聞いてほしんですけど・・・

「怒らないで聞いてほしんですけど、XXについて▲▲としてご提案させていただくとしたらいかがでしょうか」
お客様の意見と相反するようなことや、相手に突っ込んだ提案や情報をお伝えする時に、使えるマジックワードです。

 

いかがでしたでしょうか。ブログ内でもご紹介しましたが、UMUは練習に対してフォーカスした学習プラットフォームです。ご興味のある方は、デモなどもさせていただけますので、いつでもご相談ください。

▼無料相談会の予約ページ
https://umucs.youcanbook.me

 

*1 「究極の鍛錬 ~天才はこうしてつくられる」(ジョフ・コルヴァン著/サンマーク出版)

*2 「大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 」(ニール・ラッカム著)


私達UMUは、企業様向けに研修のオンライン化やリモート学習の無料相談会を毎日実施しております。

また、常に最先端のテクノロジーと学習情報をアップデートしておりますので、お困りごとや、追加で必要な情報のご要望などございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

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