AIとの“壁打ち”がMRの行動を変えた ― CSLベーリング、uShow・Chatbot活用でスキル向上を実現

CSLベーリング株式会社は、生物学的製剤を専門とするグローバル・バイオテクノロジー企業として、重篤および希少疾患の治療・予防に用いられる革新的な製剤を患者さんにお届けすることを使命としています。日本においては、免疫・希少疾患、血友病、救命救急・止血の各領域を主要分野とし事業を展開しています。同社では、MR(医薬情報担当者)の育成において「実践的アウトプットの機会不足」という課題を抱えていました。その解決策としてAI学習プラットフォームUMUのAIプレゼン練習ツールuShowとAI対話練習ツールChatbotを導入。AIを相手に繰り返し行う「壁打ち」は、MRの学習スタイルと行動、そして成果に変化をもたらしました。その変革の軌跡を、研修責任者の服部 裕企さん、同部署の潘 さんにお話を伺いました。

 

 

企業情報

社名: CSLベーリング株式会社 (英語表記:CSL Behring K.K.)

本社所在地 : 東京都港区北青山一丁目 2 番 3 号 青山ビル 8 階

設立:2000年

ホームページ:https://www.cslbehring.co.jp/

「分かる」と「できる」の間にあった、越えられない壁

―まず、UMUのAI機能を導入される以前、研修や人材育成においてどのような課題を抱えていらっしゃいましたか。

「当時の研修スタッフは、毎月の研修日を着実に確保し、継続的な運営に努めていました。一方で、研修を事業課題の解決手段として、より効果的に結びつける仕組みの構築は、検討を重ねている段階でした。」と、研修責任者の服部氏は、当時の状況を振り返ります。

「日々の研修業務をこなすので精一杯で、学習内容が知識・スキルとして定着しているかを確認する方法には今後さらなる工夫や改善の余地がありました」。

しかし、より深刻だったのは、学びの質に関する課題です。集合研修の時間は限られており、一人のMRが実践的なロールプレイングを行えるのは、せいぜい2、3回。これでは、知識を「知っている」状態から、現場で自信を持って「できる」状態へと引き上げるには、圧倒的にアウトプットの量が不足していました。

限られたリソースの中で、現場上長が割けるフォローアップの時間に限界がある中、この「分かる」と「できる」の距離感は、MR一人ひとりの成長実感にも、組織としての成果にも結びつきにくいという構造的な問題を生んでいたのです。MRが医療従事者の真のパートナーとなるために、いつでも、何度でも実践練習ができる環境の構築が急務でした。

 

AIがいつでもどこでも対応できる“専属トレーナー”に。アウトプットの「量」と「質」を両立する学習システム

―その「アウトプット不足」という問題に対し、UMUのuShowChatbotが解決策になると考えられた理由を教えていただけますか。

この問題を解決する鍵が、AIをトレーナー役として活用する、という発想でした。同社は2022年11月からの約8カ月間のパイロット導入を経て、2023年7月からUMUの本格運用を開始し、2024年にuShowChatbotに着目。

uShowは、AIがプレゼンテーションを客観的に評価してくれるツールです。MRは人目を気にすることなく、製品説明のロールプレイングを納得がいくまで、何度でも練習できます。「uShowは、事前に設定した評価項目に基づいてAIが即座にフィードバックをくれるため、改善のサイクルを高速で回すことが可能です。特に、薬剤の提案ポイントとなるFAB(特徴・利点・利益)のスコアが練習を通じて伸びていったのは、大きな手応えでした。」

一方、Chatbotは、実際の面談で想定されるさまざまな質問をシナリオとして組み込み、対話形式でトレーニングを行うツールです。「他人の時間を使わずに済むのが助かる」「自分のタイミングで繰り返し取り組める」と現場からも好評だったといいます。「医療従事者との面談においてよくいただくご質問を想定したシナリオを用意し、実践的な対話スキルを磨いてもらいました」と、潘氏は語ります。

このAIによる「壁打ち練習」の導入は、同社のMR育成において、新しい能力開発モデルの構築に繋がる新たな取り組みとなりました。

スキル向上と業務効率化。データが示す導入後の確かな成果

―実際にuShowChatbotを導入されて、どのような変化や成果がありましたか。

uShowChatbotの導入は、目に見える成果となって即座に表れました。

最も効果実感があったのが、MRのスキルと自信の向上です。その成果を裏付けるように、情報提供の知識とスキルの定着度を測るためのサーティフィケーション(認定)では、受験者全員が一発合格を成し遂げました。この試験は、MRが医師の前で自信を持って情報提供を行うための「お墨付き」であり、組織全体の知識とスキルが標準化されたことを意味します。

その効果は、社内評価に留まりませんでした。「UMU導入後、第三者機関を通じて実施した市場調査においても、結果が示されました。研修で特に強化した知識とスキル項目に関する外部からの評価が、明確に向上していたのです」と服部氏は語ります。「研修で『できた』という次元から、ちゃんと『適正使用情報がお伝えできている』ことが証明されたのかなと思っています。」

『分かる』から『できる』になれば自信がつき、試したい気持ちがうまれる。これが、自発的な行動変容につながるのです。AIとのアウトプットの反復練習が、MRの確かな自信を育み、現場での積極的な行動へと繋がったのです。

さらに、副次的な効果として、研修運営の効率も向上。学習プラットフォームをUMUに一元化したことで、全社として月間208時間ものオペレーション工数削減も達成しています。

目指すは「医療従事者のパートナー」。AIと共に拓く人材育成の未来

―今後のUMU活用の展望や、貴社が目指す人材育成の未来像についてお聞かせください。

「私たちの会社が目指すのは、医療従事者のパートナーとして、高い提案力やコミュニケーション力を持った人材です。」

服部氏が語るこの理想の実現に向け、uShowChatbotといったAIツールは、今後も重要な役割を担っていきます。今後は、これらのツールをさらに広く展開していくことも視野に入れているとのことです。

最後に、これから変革を目指す企業へのメッセージをいただきました。

「成功の鍵は、ツールの導入自体をゴールにしないことです。常に『会社の事業課題は何か』『そのために何が必要か』という原点に立ち返り、テクノロジーをあくまで課題解決のための最適な手段として位置づけること。そこを明確にし、経営層に理解してもらうことが、大きな投資をしてもらうための最も重要なポイントだと思います。」

CSLベーリングの挑戦は、AIという名の“専属トレーナー”がいかにして学習を科学し、組織と人の成長を加速させるかを力強く示しています。

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