パフォーマンス・ラーニングとは?生産性向上のための学び

企業の人材開発を成果につなげるために必要なものはなんでしょうか? 学習の効果、学習の効率、学習者の学ぶ意欲を刺激する学習の体験を提供することです。生産性が低いことは、多くの日本企業が抱える課題です。近年、生産性を向上させるために、パフォーマンス・ラーニングを取り入れる企業が増えています。では、どのようにパフォーマンス・ラーニングを取り入れていけばよいのでしょうか。UMU創業者ドングショー・リーおよび片桐康宏の著書「パフォーマンス・ラーニング」の一部からご紹介します。

 

 

パフォーマンス・ラーニングとは

パフォーマンス・ラーニングとは、ビジネスの成果と生産性を向上させ、競争において優位に立つための学びのことです。企業が収益を上げたいと考えたとき、考えられるアプローチとして、広告宣伝を強化すること、値引きをすること、人員を増やすことがあります。しかし、値引きをすれば収益が下がる可能性もあり、宣伝や増員にはコストがかかります。

そこで必要となるのが、4つ目のアプローチ、社員のスキルアップを支援し、能力を向上させることです。これがパフォーマンス・ラーニングです。

世界経済において目覚ましい活躍をしている企業ほど、今後の自社の成長を見据え、学びによって社員の能力を高めています。会社が適切な学習環境を整備することで、社員個人と組織全体のスキル向上と持続的な成長を促しているのです。

 

業績アップを実現するパフォーマンス・ラーニング

企業にとっての「いい研修」とはどんな研修でしょうか。研修後のアンケートで受講者から高評価を得ることはひとつの指標にはなりますが、本当の意味で研修を評価する指標は「実際に成果につながったのかどうか」です。

日本企業の人材育成は、研修を実施すること自体が目的化している傾向があります。新入社員研修は、入社前の内定者研修から入社後の数ヶ月間、決められたメニューをこなします。階層別研修も、決められた年次や昇格のステップに応じて、決められた研修を行います。研修のROI(投資対効果)を意識して成果が出るように設計していないのです。成果につながる研修にするためには、研修の成否を評価する明確な目標、目標を達成するための学習効果の高い研修設計の2つが必要です。

従来の研修では、ワークショップやロールプレイング、eラーニング、OJTなど、どのような研修内容を組むかというインプットを考えることからスタートしていました。パフォーマンス・ラーニングを実現するには、どんな成果を得たいのかを定め、求める成果に結びつくように研修内容を考えるのです。

業績を上げるためには、結果を生み出す従業員が必要です。そのような従業員を増やすためには、学びによって「知っている」を「できる」に変えていかなければなりません。

パフォーマンス・ラーニングの4つのステップ

会社全体として生産性を向上させるには、「知っている」と「できる」の間の溝を埋める工夫が必要です。そのために、成果から逆算した戦略的な学習「パフォーマンス・ラーニング」が求められます。では、どうすればパフォーマンス・ラーニングを取り入れ、成果に結びつく研修ができるのでしょうか。4つのステップを紹介します。

 

ステップ1 学ぶ:効果を最大化する学び方

まずは知識やスキルを手に入れる段階です。学び方は、講義やワークショップ、さらにはテキスト、動画、音声などの各種メディアを活用するなど、さまざまです。

テクノロジーと学習の科学を活用する効果的な学びにつなげるためには、主に次のような方法があります。

 ・「オフライン研修(対面型の集合研修)」「オンライン研修」「オンライン学習」、または講義、動画、テキストなどの学びを効果的に組み合わせる

 ・短い時間で学びを積み重ねる「マイクロラーニング(小分け学習)」を活用する

 ・研修の前と後の学びを充実させる

 

ステップ2 練習する:現場に出る前に実践する

学んだことを自分のものにして仕事で結果を出すには、アウトプットしながら学んだことを身につけていきます。練習は、「知っている」から「できる」へと進む最初のステップです。

あらかじめ研修のプログラムとして練習を盛り込み、ロールプレイングなどの課題提出や、テストやクイズを活用します。現場に出る前に繰り返し練習することで、失敗やトラブルを恐れずに、学んだ知識やスキルを体に覚え込ませることに集中できます。

なお、学ぶときと同じく、練習の段階でも短時間の「マイクロプラクティス」が効果を発揮します。

 

ステップ3  評価・指導する:定着させながら正しく身につける

学び、練習して身につけた知識やノウハウは、そのままでは現場で活かせるとは限りま

せん。学んだことを適切に習得し、成果につなげるためには、フィードバックを行い、正しい行動へと導くように指導する必要があります。

パフォーマンス・ラーニングでは、振り返りと軌道修正を個々の従業員やマネージャーに任せず、仕組みとして提供します。テクノロジーを活用して、いつでもどこでも、空いた時間に評価と指導を行えるようにするのです。

 

ステップ4  仕事に活かす:「現場での学び」で成果につなげる

学習、練習、評価・指導によって身につけた学びを、「知っている」から「できる」の段階に引き上げ、仕事で使えるものにしていきます。ここで重要なのは、実際の仕事の中で学びを応用することです。

現場で実践してみて、足りないことや疑問があれば、前のステップに立ち戻り、さらに学びを深めたり広めたりしながら学習や練習、評価・指導を繰り返していきます。そのためには、ピンポイントで行われる研修だけでなく、いつでも学び、練習し、評価・指導を受けられる環境をつくることが大切です。

 

パフォーマンス・ラーニング実践のコツ

上で述べた4つのステップの効果を高めるには、準備が必要です。研修前の準備段階から研修中、研修後まで、設計の仕方やコンテンツのつくり方など、パフォーマンス・ラーニングを実践するコツを紹介します。

まずはパフォーマンス・ラーニングを成功させるための研修設計の際、以下の7つのポイントを意識します。7つのポイントは、この順番で行うことが重要です。

 

1.どのパフォーマンスを向上させるかを決める

まずは、パフォーマンスの定義をします。何を向上・改善させるかが定まっていなければ、具体的な目標を定めることはできません。「売上を上げる」「従業員のスキルを上げる」「離職率を下げる」など、改善したいパフォーマンスを具体的に定めます。

 

2.研修の成果を測定する基準(目標)を定める

研修の目標を決めると、どのような研修を設計すればよいのかが見えてきます。

目標を決める→目標達成につながる測定指標となるKPI(重要業績評価指標)を設定する→KPIにつながるマインドや行動を言語化する→研修で高める能力を定め研修を設計する、というように、目標から逆算して具体的な研修設計へとつなげていきましょう。

 

3.どのエリアの能力を高めるかを決める

2を踏まえて、「知識」「ハンズオン」「ソフトスキル」「カルチャー・理念浸透」の4つの能力のうち、どこを高めるか決めます。

企業の生産性向上につながりやすいのは、「知識」とコミュニケーション力や協調性、問題解決能力、リーダーシップなど、数字であらわせない「ソフトスキル」です。どの能力を高めればよいかわからない場合は、この2つを意識するといいでしょう。

 

4.効果的な学習・練習・評価の設計

高めるべき能力が決まったら、それに合わせた学習コンテンツを選びます。コンテンツには、動画、音声スライド、図説、会議、試験などさまざまなものがあります。「知識」「ハンズオン」「ソフトスキル」「カルチャー・理念浸透」の4つの能力と「学習」「練習」「評価」の3つの段階を意識しながら、最適なコンテンツを選びます。

 

5.評価・指導の機会を設ける

学習と練習だけで終わらず、評価・指導を行う機会を研修の中に組み込みます。たとえば、営業部員のプレゼン力を高める研修であれば、ロールプレイング動画を提出してもらい、それに対して上司が評価と指導を行います。社内のSNSに動画をアップしてコメントを残したり、定例のミーティングでよかった点や改善点をフィードバックしてもよいでしょう。先輩や同僚も評価するようにすると、学び合いの文化が生まれると同時に、マネジメント効率も上がります。

 

6.職場での実践を研修の題材にする

職場での実践を通した学びこそ、パフォーマンスを向上させる大きな役割を担っています。目標とそのためになすべきことを具体的な「アクションプランシート」としてまとめ、振り返りを行いながら経験値を高めていくことが大切です。

 

7.効果を測定し、共有する

研修の効果測定とその結果の共有も行うことが大切です。研修から一定期間経ってから、目標から逆算した研修の効果測定の基準がどのくらい達成できているかを確認します。達成できていないとしたらどこに原因があったのかを探り、今後の改善点を洗い出します。効果を測定するには、短期ではなく中長期的な視点で計測していくことも大切です。

研修の大枠となるコースを設計したら、コースを構成するコンテンツを用意していきます。コンテンツをつくるときのポイントとして、以下の5つを意識すると学習効果が高まります。

 

①「学習」「練習」「評価」の3つのコンテンツを用意する

②ストック型とフロー型のコンテンツを使い分ける

③デバイスの特性に合ったコンテンツを選ぶ

④コンテンツはあるものを使う

⑤みんなでつくる

 

学習は継続できなければ意味がありません。学習者が自然と学びたくなる仕組みを、研修の中に組み込んで設計することが重要です。学習者のモチベーションを高めることで、社内で自発的な学びが生まれる文化が醸成されるでしょう。

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