マイクロラーニングについてのATD白書
ATDICE2017などでもマイクロラーニング関連のデータ発表の根拠とされていたATD Researchによるマイクロラーニングに関するホワイトペーパーを翻訳しましたのでシェアさせていただきます。
https://research.td.org/full-research-reports/microlearning-delivering-bite-sized-knowledge
このホワイトペーパーによるとマイクロラーニングだからといって時間を短くすることにとらわれるのではなく、必要とされるだけの長さにする必要があるようです。
また、まず学習目標に照らし、その教育がマイクロラーニングに適しているかどうかの判断も必要とのこと。
知識を試すテストが学習者のやる気を無くさせる場合もあるので注意が必要。
実地型のアクティビティと組み合わせるとより効果的。などということがわかります。
EXECUTIVE SUMMARY
タレント開発の世界ではマイクロラーニングが最新の話題となっていますが、その定義は曖昧なようです。
この分野の多くの人が、マイクロラーニングとはバイトサイズのチャンクで行われる 学習であると言っています。
『Microlearning to Boost the Employee Experience 』(2017)の中で Elise Greene Margolは、マイクロラーニングのことを「小さい単位で短時間に提供されるトレーニン グ」と定義しています。
このタイプの定義に欠けているのは、マイクロラーニングに適した時間の長 さです。
つまり、このような既存の定義は役に立ちますが、タレント開発の専門家にとってはそれ ほど実用的ではありません。
『Microlearning: Delivering Bite-Sized Knowledge 』(この調査)は、こ の曖昧なトピックを明確にする目的で行われました。
ATD Researchは、マイクロラーニングに適し た時間の長さを定義し、企業・組織がどのようにマイクロラーニングを活用しているかを知り、マイ クロラーニングの有効性として分かっていることを明らかにし、企業・組織が将来的にマイクロラー ニングを導入する計画を理解するため、タレント開発の専門家を対象とする調査を行いました。
調査によると、人間の平均的な注意持続時間が減少しているそうです(Microsoft 2015)。また、学習者は、特定のトピックに20分以上集中することが困難です (Islam 2013)。
ATDレポート『Learners of the Future: Taking Action Today to Prevent Tomorrow’s Talent Crisis 』 (2015)によると、回答者の62パーセントが、 2020年には学習コンテンツが小さく簡単に学べるチャ ンク形式になると考えています。
注意持続時間が短くなり仕事が忙しくなるにつれ、タレント開発の 仕事も、働く人たちの新たな必要性に応えるべく進化する必要があります。
さらに、マイクロラーニ ングは、長い形式の学習よりも効果的である可能性があります。
調査によると、短いコンテンツを 与えられた後にアセスメントを行った場合、長い「ブロック」単位のコンテンツを与えられほとんど質 問されなかった場合よりも学習効果が高かったとのことです(Kapp & Proske 2015)。
このように、マイクロラーニングはタレント開発の切実なニーズに応えられる可能性があります。
マ イクロラーニングは特に、忙しいスケジュールに学習を組み入れることに苦慮している人たちにとっては、パーフェクトなトレーニングソリューションとなる可能性を秘めています。
実際、現在の職 場でマイクロラーニングを使っている回答者が考えるその主な利点は、学習者の都合のいいとき にアクセスできること(41パーセント)、および学習者の負担が少なくなること(40パーセント)です。
便利で短い学習の必要性を認識している有力企業の1つに、Accentureがあります。
2016年の ATDケーススタディ『Accenture: Delivering High-Touch Learning with High-Tech Tools 』では、企 業における学習の主要な要素の1つは、「忙しい従業員と、ますます短くなる注意持続時間に適し たナゲット化された学習」であることが示されています。
WHITEPAPER
2016の初期に、ATD Researchは、マイクロラーニングに許される最長時間およびその理想的な時間に関して、144人のタレント開発の専門家を対象に簡単な投票を行いました。
そして、マイクロラ ーニングは平均10分程度、最大でも13分であるべきという結果が得られました。
この投票結果は、 この調査で使った質問にも反映されています。
参加者
ATD Research が、2016 年の 9 月と 10 月にアンケートを送ったところ、596 人から回答が得られま した。回答者の半数近くが一般社員、32 パーセントがマネージャー/スーパーバイザー/チームリーダー、14 パーセントがディレクター、7 パーセントがエグゼクティブです(図 1)。
図 1:管理範囲 現在の職場での管理範囲を教えてください(実際の職位ではなく、以下のラベルから該当するものを選んでください)。
回答者の大部分(71 パーセント)が、9,999 人以下の企業・組織に所属しています(図 2)。50,000 人以上の企業・組織に所属している回答者は、たった 11 パーセントです。
図 2:従業員数 勤務先の従業員数を教えてください。
マイクロラーニングの使用
この調査の596人の回答者のうち、40パーセント近くが、現在の職場でマイクロラーニングが使用されていると答えています。
残りの61パーセントは、マイクロラーニングを使用していません。20パ ーセントは、今後もそれを使用する計画がなく、41パーセントが今後1年のうちに使用する計画で す(図3)。
この調査の全回答者は、その職場でマイクロラーニングが使用されているかどうかに関 する知識があります。
この調査のセクション 1 では、現在の職場でマイクロラーニングを使用していない人にフォーカスし ています。
セクション 2 と 3 では、現在マイクロラーニングを使用している 228 人の回答者にフォー カスしています。
図 3:マイクロラーニングの使用 現在の職場でマイクロラーニングが使われていますか?
主な知見
ここに示すデータは、職場でマイクロラーニングを作成・導入するタレント開発の専門家に役立つ ことを目的としています。
この調査から得られた主な知見を以下に示します。
● 現在の職場ではマイクロラーニングが使用されていないけれども、今後1年の間に導入される計画があると答えた回答者によると、導入される予定のマイクロラーニングは、自習型のe ラーニング、ビデオ、ビジュアルです。
● 現在の職場でマイクロラーニングが使用されていると答えた回答者の3分の1以上が、効果的な学習の主な妨げとなっているのは、学習者に責任を持たせないことであると答えていま す。
● マイクロラーニングの提供方法として上位2つを占めるのは、ビデオと自習型のeラーニング です。
結論と推奨事項
この調査では、多くの企業・組織では現在マイクロラーニングが使用されていないけれども、今後1 年のうちに導入する計画であることが明らかになりました。
マイクロラーニングを採用する計画の ある人は、すでにそれを導入しているタレント開発の専門家の経験から学ぶ必要があります。
現在マイクロラーニングを使用している人は、効果的なマイクロラーニングを妨げる主な要因は、 学習者に責任が負わされていないことだと答えています。
また、現在の職場ではセキュリティやテ クノロジー上の問題が原因でマイクロラーニングに簡単にアクセスできないという人や、マイクロラ ーニングを自分のスケジュールに組み入れることに学習者が困難を感じていると答えた人もあり ます。
タレント開発の専門家がその職場でマイクロラーニングを導入・拡張する場合には、このような妨害要因や以下の推奨事項を十分に考慮することが重要です。
推奨事項
この調査やSMEへのインタビューから得られた知見に基づき、以下のことを推奨します。
必要とされるだけの長さにする
インストラクションデザイナーは、学習を特定の長さにしなければならないというプレッシャーを感じ ているかもしれません。
しかし、学習プログラムは、余計な詳細情報を削る一方、最も重要な情報 を伝えられるだけの長さを備えている必要があります。
Elise Greene Margol (2017)によると、タレン ト開発の専門家がマイクロラーニングを作成するときには、簡潔さを心がける必要があります。
「重要なメッセージを短い時間で伝えます。メッセージを明確かつ簡潔にし、社内だけで通用する ような特殊な言葉は使用しません。知っていれば役立つことではなく、知る必要があることにフォ ーカスします。」
また、その逆も真なりです。より多くの時間が必要とされるような学習プログラム を短いマイクロラーニングセグメントに区切ってはなりません。
リーダーの支持をとりつける
Ben Locwin は、アカウンタビリティはマネジメントから始まると言っています。
学習者が、マイクロラ ーニングの使用に責任を持つようにするには、リーダーやマネージャーがその重要性を強調する ことが不可欠です。
マネジメントやシニアリーダーが、学習やトレーニングの意義を強調すれば、 他の従業員もそれに従います。つまり、これはアカウンタビリティの問題を乗り越える重要なステッ プとなります。
はじめに学習目標を明らかにする
マイクロラーニング形式にする前に、まず学習目標を明らかにする必要があります。
明らかになっ た学習目標が、マイクロラーニングに最も適した形式ではなく、むしろ教室で行われるインストラクター指導の学習に適している場合もあります。
たとえば、従業員がテクニカルトレーニングを必要とする場合、実地演習型の学習プログラムの方が適切です。
Elise Greene Margolは次のようにア ドバイスしています (2017)。
「それぞれの学習について、具体的で明確な学習目標を立てます。こ れにはスキルを分けて考えます。バイトサイズの学習に多くのコンテンツや目標を詰め込みたくな るかもしれませんが、それではうまく機能しません。何らかの行動が学習目標となるようにし、学 習者がどのようなスキルや知識を身に付けたり、取り入れたりすべきかを明確に示します。」
知識のテストは必ずしも適切な選択肢ではない
この調査でインタビューしたエキスパートによると、マイクロラーニングを導入するときに、知識のテストは必ずしも適切ではありません。
たとえば、Ben Locwin氏は、「それぞれのマイクロラーニン グでアセスメントを強制してはならない」と言っています。
Carla Torgerson氏も、クイズの使用に注意を促しています。それは、クイズを使うと学習者のやる気がなくなる可能性があるからです。
マイクロラーニングは、短時間で行うことを前提としているので、適時の学習を妨げる障害と見なされ る可能性があります。
実地型のアクティビティやシミュレーションとの統合を検討する
この調査の結果、マイクロラーニングアクティビティに実地型アクティビティやシミュレーションを組み入れている組織は、その取り組みの効果が非常に高いと感じていることが明らかになっています。
このような要素は、それ以外のオプションよりも関与意識を高めたり、学習に多様性を持たせることができる可能性があります。
学習者にとって、プレッシャーのない環境でスキルを練習・適用する機会は、たとえそれが非常に短いものであっても貴重な体験となります。
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