【LTEN2024】 基調講演レポート
ライフサイエンス業界の研修・教育の専門家のためのグローバルなネットワークであるLTEN(Life Sciences Trainers & Educators Network)が、今年も年次総会「LTEN2024」を開催いたしました!製薬・バイオテクノロジー・医療機器等の業界で活躍するトレーナーや教育者たちが、スキルや知識の向上のために世界中から集う、業界で最大規模のイベントです。今年の開催地はアメリカ、フロリダ州キシミーで行われました。
この記事では、基調講演で語られた内容についてご報告させていただきます。
基調講演スピーカーのご紹介
過去の記事でもご紹介しましたが、今年は2名の方が登壇されました。
そして、2024年のAIとライフサイエンス業界についてKarl Kappの基調講演も行われました。
この後はそれぞれの基調講演について詳しくご報告いたします!
Freestyle+
FreeStyle+によるパフォーマンスが実施されました。
- 5taps
- Boots & cuts
- Gebberish flow
- Debrief
- Vennispiration
などの参加型ワークを実施し、参加者同士でコミュニケーションを取りながら発声、体を動かすなどすることにより、会場全体の雰囲気が柔らかいものへと変化していきました。
Vennispirationでは以下3つの問いが用意されました。
①仕事は何か。取り組んでいるプロジェクトはどのようなものか
②趣味はなにか
③仕事と趣味はどのような部分が似ていると感じるか
LEVEL UPというと何をイメージするかという問いに対し、序盤では「Improvement(改善)」や「Growth(成長)」などのキーワードが多かったのに対し、終盤では「Playful」「Energizing」などへと変化。実際にセッション中にも、Playfulがもたらす効果について以下の通り紹介されていました。
- 自己表現(前頭前野の活性化をもたらす)
- オキシトシンの分泌(視床下部における神経化学反応)
学び、成長することは、本質的には楽しいことであるというメッセージ性を感じたパフォーマンスでした。
現地に実際に行ったUMUメンバーからは、
”昨年よりもさらにインフォーマルな雰囲気で、聴講者がvacationを兼ねて学習するという雰囲気を強く感じた基調講演だった”
”昨年も大きな要素であった「音楽」を今年も使用した講演だったので、非日常というか、エンゲージメントやモチベーションを高めるイベントだと感じた”
といったコメントがありました。
Chad E. Foster
2日目の基調講演は、チャド・E・フォスター氏です。
チャド・E・フォスター氏は、若い頃に視力を失いましたが、そのことが彼の大志を妨げることはありませんでした。
彼はハーバード大学のリーダーシップ・プログラムを卒業した最初の盲目の経営者となり、予想を裏切るソフトウェア・ソリューションを開発。チャド氏の基調講演では、試練を乗り越え、回復力を養い、逆境を強みに変えることに焦点が当てられました。
重要ポイント
- 不利な状況を活かす(Take advantage of disadvantages)講演者は、自身の視力喪失という逆境を活かし、新たなスキルを習得することで自己成長を遂げました。彼の経験から、困難な状況に直面してもそれを機会と捉え、前向きに活かすことが重要であると強調しました。これは、どんな状況でもポジティブな視点を持つことの大切さを教えています。
- 未達成の可能性を抱えたまま墓に入ることが最も恐ろしい(The scariest thing is to go to your grave with unmet potential)彼は、挑戦し続けることの重要性を強調しました。視力を失った後も、自分の可能性を追求し続けることで、新たな道を切り開いた彼の経験は、挑戦を恐れずに未達成の可能性を実現することの大切さを示しています。
- 不快に慣れる(Get comfortable with discomfort)講演者は、困難な状況でも冷静さを保ち、不快な状況に適応する力を養うことの重要性を説きました。彼は、自身が盲目になった後も新しいスキルを習得し、日常生活や仕事に適応するための努力を続けました。この経験から、適応力とレジリエンスがどんな障害も乗り越えるための鍵であることを学びました。
盲目の講演者が自身の経験を通じて、逆境を活かす力とポジティブな視点の重要性を強調しました。彼はまず、視力を失った経緯を語り、それを「不運」と捉えるか「強さ」として活かすかの選択を例に挙げました。彼は「Take advantage of disadvantages(不利な状況を活かす)」という考え方を提唱し、困難に直面したときこそチャンスがあることを強調しました。
また、「未達成の可能性を抱えたまま墓に入ることが最も恐ろしい」という言葉を引用し、挑戦することの重要性を訴えました。彼は、自分の視力喪失を克服するために新しいスキルを習得し、盲目であることを活かす方法を見つけた経験を共有しました。この過程で彼は「Get comfortable with discomfort(不快に慣れる)」というメッセージを体現し、適応力とレジリエンスの大切さを学びました。
彼はまた、自己成長と他者への貢献の重要性を強調し、自身の経験を通じて得た教訓を他者と共有することが社会にとっても価値あることだと述べました。講演全体を通して、困難を乗り越え、成長し続けることの重要性が強く訴えられました。
2024年 AI とライフサイエンス業界の現状に関する基調講演
2024年のAIとライフサイエンス業界についてのKarl Kapp(カール・カップ教授)の基調講演は、AIがライフサイエンス分野をどのように変革し、効率化、パーソナライゼーション、イノベーションを提供しているかを紹介する内容です。
カール・カップ教授は、OpenAIのChat GPT 4と対話しながら、新しいスタイルで講演を行いました。講演では、AIの基本的な定義や種類、具体的な使用例を紹介し、エネルギー消費やセキュリティ、倫理、ガバナンスなどの課題についても触れました。特に、狭義のAI(narrow AI)と広義のAI(general AI)、およびPredictive AIやGenerative AIについて解説を行い、AIがどのようにライフサイエンスのトレーニングやデータ収集に役立つかを述べました。
AIは単独で存在するテクノロジーではなく、目的を達成するための手段(ツール)。テクノロジーがどうという話ではなくあなた自身が何を解決したいのか?ということが重要ということを改めて伝えいました。
AIの種類
Predictive AI= 今後何が起こるのか予測するAI
Genarative AI= アルゴリズムによってシミュレートし、新たに生み出すAI
AIについて語る時にどの種類のAIについて触れているのかを明確にすることが大切。結果、「未知(見えないこと)」に対する不安や恐怖を減らすことにつながります。
キーポイント
・Hallucinations:正しい情報を参考にしていない場合にはAIから誤った情報が返される
・Energy Usage:AIを使うには多くのエネルギーが必要
・Security
・Ethics
・Governance:クリアなガイドラインやレギュレーションが必要
現在も上記をはじめ多くの項目において、何が起こっているか注視する必要がある
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、ここ10-15年のAIの進化についてどう捉えているか?どのような進化が起こっているのか?というAIの進化とその影響について話し合われました。AIの活用が学習の個別化やスキル向上につながること、またAIがトレーニングや業務の効率化にどのように貢献するかについて具体的な事例が紹介されました。以下はそれぞれのスピーカーが伝えていた内容をご紹介いたします。
Mani Chidamabaram
Zoomなどでは、AIが会議の要約を行うなど、日常業務の効率化に役立っています。
AIを使って日々の業務をどのように効率化するかが重要なポイントです。
AI導入におけるチャレンジや障害について議論がありましたが、それを乗り越えるためには新しいテクノロジーに積極的に取り組むことが重要です。
Kari Kapp
AIを使えば、画像編集や情報収集、アウトライン作成などの作業が効率化されます。これにより、デザイナーや他の専門家が重要な選択に時間を割くことができます。また、AIはパーソナルコーチとして、トレーニングやモチベーション向上に役立ちます。
AIはパーソナルコーチとして、プレゼンのスキル向上やモチベーション向上に役立ちます。また、クライアントや他の組織の生産性向上をサポートすることも可能です。正しくAIを理解し、業務で活用することで、自分自身だけでなく他の人を助けることができます。
Karl KappのおすすめAI
①https://chatgpt.com/gpts
→gain information and creating Chatbot based on information you provide
②https://www.meta.ai/
→Image generation
③https://www.perplexity.ai/
→Reference & 情報を獲得したい時
④https://www.colossyan.com/
→アバターを使ったビデオ作成
Kebin Clemence
AIは学習者に個別化された学習環境を提供することで、プレゼンなどの特定のスキルを身につけるのを助けます。これにより、学習者と直接向き合う時間が増え、効率的な学習が可能になります。
AIベースのコーチングシミュレーションは、どこにいてもトレーニングや練習ができる利点があります。例えばChatGPTを使って、個別のフィードバックを受けたり、改善すべき点を指摘してもらうことも可能です。
AIは安全な環境での練習やシミュレーションを可能にし、ワークフローを改善します。これにより生産性が向上し、病院やセールス部隊でもその効果を理解して活用することが求められます。
Alma Roldan
AIは技術を身近なものにし、数学や専門知識がなくても使えるようになりました。AIを使うことで、コンテンツ作成やデータ分析を通じて学習効果を高めることができます。またデータを使ってスキルギャップやトレーニングニーズを明確にでき、効率的なパフォーマンス向上が期待できます。
AIツールを使用する際には目的を明確にすることが重要です。学習データを分析し、スキルギャップやパフォーマンスの傾向を把握することで、効率的な教育やトレーニングが可能になります。しかし、データの取り扱いやセキュリティについても慎重に考える必要があります。
AIを使い過ぎるとガバナンスが失われることがあります。AIが生成したコンテンツは人間によってレビューされるべきです。セキュリティやデータプライバシーについても十分に考慮する必要があります。
AIを車だと考え、あなたはそのドライバーです。安全に運転し、効果的に使うことが大切です。他の人を助けるためにも、AIの活用方法をよく理解しましょう。
講演全体を通して、AIは単なる技術ではなく、問題解決の手段であること、そしてAIの正確性や信頼性、倫理的な運用が重要であると強調されました。また、AIの利用が今後ますます高価になり、エネルギーの利用やガバナンスの導入が必要であることも指摘されました。参加者に対しては、AI技術の最新動向に注視し、適切なユースケースを見つけ活用していくことが推奨されました。
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2023年LTENカンファレンス総括レポート〈UMU〉
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