新人導入教育研修におけるUMU活用事例 〜Input偏重型研修からの脱却と、Output重視型研修への転換~
株式会社ツムラ
医薬マーケティング部 教育研修課
茂木 敏史 氏
研修実施後、その研修の効果が測りづらいことに課題を抱えている会社も多いのではないでしょうか。UMUを導入した株式会社ツムラでは、人に「しっかりと説明できる」というアウトプットを重視した研修に取り組んでおり、UMU導入後新入社員向けに実施したMR試験対策模試では、過去にない好成績となりました。入社2年目の社員の製品教育においてもUMUを活用し、知識定着を促すようなアウトプット中心の仕掛けを設定し、現場に活きる研修へと変化させています。2022年11月にオンライン開催したセミナーにて、アウトプット重視型の研修で “自信をもって製品について話せるMR”育成に取り組んだ、株式会社ツムラ 医薬マーケティング部 教育研修課 茂木敏史氏にお話をうかがいました。
企業情報
会社名:株式会社ツムラ
設立:1936年4月(創業:1893年)
代表取締役CEO:加藤 照和
所在地:東京都港区赤坂二丁目17番11号
資本金:301億42百万円 (2022年3月31日現在)
事業内容:医薬品(漢方製剤、生薬製剤他)の製造販売
URL:https://www.tsumura.co.jp/index.html
実績に結びつく研修にしたい“話している場面の録画”機能に期待
UMUに出合ったのは2021年頃です。その頃はUMUのプラットフォームについて何も知らない状態でした。果たして本当に現場で効果を発揮するのかどうかを疑問視しており、何度も質問をさせていただきながら、当社の研修場面での活用イメージを描いていきました。質問に答えていただくなかで、「受講生が動画を録画し提出できる」という点に強く興味を持ちました。動画の録画があれば、話者本人が自分の話す姿を確認できるだけでなく、他の研修生、研修担当者、部門の上長も確認できます。使い方次第で大きな効果が出せると期待をもって、動画録画機能を活用し1年間研修を実施してまいりました。
また、私がこれまで課題に感じてきた「研修の受講が現場にどう結びつくのか」、仮に結びついたとして「研修効果をどのように測るのか」、研修の効果測定についても取り組みました。研修効果の測定について一つ指標を見出すとするならば、人に「しっかりと説明できる」ことだと考えています。UMUの活用は「しっかりと説明できる」というアウトプットの点で、効果を発揮していると感じています。
医師に自信をもって製品を説明できるMRを育てる
当社は漢方薬のマインドシェアを市場に広げることを目標に掲げています。その目標を達成するには、MRが漢方薬についてしっかりと理解し、医師に納得いただけるように話すことが必要です。研修においても、知識を伝えるだけでなく、正しく理解をした上で、自分の言葉で人に説明できることを目標としました。
人に説明ができることは、学習において非常に大切なポイントです。なぜなら、ラーニングピラミッドでは、他の人に教えることが学習定着率の最も高い方法と言われているからです。
「明日、この本の内容についてテストをするので、読んできてください」よりも
「明日、この本の内容について説明してほしいので、読んできてください」の方が
学習定着率は高くなります。
そこで、当社はアウトプットを前提としたインプットが学習定着率を高めるという仮説を立て、研修を設計しました。「テキストの内容を人に説明できるまで読み込みなさい」というルールを設けると、しっかりと知識の定着に結びついていくのではないかと考えたのです。
アウトプットには、「話す」と「書く」の二種類があります。研修中に研修生全員がアウトプットできるのか、どうやって全員のアウトプットを確認、評価するのか、と疑問に思われるかもしれませんが、一年間のUMUトライアル利用を通して、研修でアウトプットを前提としたインプット学習を促し、全員分のアウトプットの確認、評価は可能であると結論づけました。
新入社員に実施したMR試験対策模試 Cランク未満は0人
アウトプット中心の学習は相互啓発も促す
導入教育研修(=新入社員研修)は4月から9月末まで実施し、前半はMR試験対策、後半は自社製品の学習と分け、9月に模試を実施しました。模試は昨年までCランク未満の研修生が10%ほどいましたが、今回はCランク未満(図2)が0人。また、研修生の多くがAランクに集中していました。当社では過去にないほどの好成績となっています。
昨年と本年での新入社員のレベルの差は多少あると思いますが、UMUを使った研修成果とMR試験対策模試の結果には、高い相関があるだろうと考えています。
これまでの研修は全て対面型で行いましたが、今回はほとんどの研修でUMUを活用し、インプットとアウトプットをこまめに切り替えることで受講者の知識定着を図れるようにサンドイッチ型の研修に取り組みました。研修の中では具体的に以下3点を工夫しています。
一つ目のアウトプットでは「書くこと」を課題にしています。
たとえば、テキストを章ごとに切り分けた短い動画を確認してもらい、研修生にはその後自分の言葉で動画を文字起こししてもらいます。実際に書こうとすると、何を書いたらよいのか、どのような形で箇条書きすると理解しやすいのかを改めて考える機会となり、頭の整理ができます。さらに、インプットした学びをまとめる課題に毎日取り組むと、「読んで終わり」ではなく、インプットした内容を整理することを習慣づけることができます。
二つ目の工夫は「テスト」です。
学習の定着を確認するために、1日の終わりにテストを例年実施しております。テストを受けて終わりにならないように、間違った問題は個人ごとに設定された「マイ問題集」へ自動的に流れる仕掛けにし、誤答の問題を何度も反復して確認できるよう工夫しています。従来はテキストにマークした付箋から間違った問題を確認する運用が主でしたが、UMUを活用することでいつでもどこでも外に出かける際にも、問題集を持ち歩く必要もなく、各自所有のスマホやPCなど様々なデバイスからアクセスができ、反復練習できる環境を提供できるようになりました。
最後に研修生自らが「話す」アウトプットを課題にしています。
間違った問題、自分が課題だと思っている箇所について、他者に解説する動画を撮影してもらいました。撮影した動画はUMUにアップロードされるので、研修生全員の動画が一覧で表示されます。
研修生には、他の研修生の動画も必ず閲覧して、コメントを残すように伝え、お互いの間違いやすいポイントを知るよう促しています。他の研修生が自分より優れた表現をしていると「負けたくない」という気持ちに駆られ、学習に対するモチベーションがあがってくることもありました。「私はこう覚えたよ」と情報共有もできるため、集合知のような形で研修生同士の知識を寄せ集めることができました。さまざまな学習の相乗効果が発揮された結果、9月時点の全国模試では全員が合格圏内という成果に繋がったと考えています。
動画投稿は3つの分析評価方法
投稿された動画は、3つの分析評価方法を用いてフィードバックしています。
一つ目は「AI分析」 です。動画提出後、明瞭さ、スピード、流暢さ、アイコンタクト、表情、ジェスチャーの6つの軸で評価、採点されます。AI分析のおかげで、これらの項目について評価者(教育研修課)が研修内で細かなアドバイスをする必要がなく、話の内容だけに的を絞ってアドバイスすることができました。
二つ目は「キーワードスコア」です。
動画撮影では『「重要」「結論」「理由」の3つのキーワードを入れて説明してください』という課題を出しました。研修生はキーワードを意識して構成をつくるため、理路整然と話をする方が多くみられました。動画は、全て文字起こしされているので、この章における重要なポイントが押さえられているか、どんな喋り方、どんなキーワードを使っているのかを確認することもでき、説明の訓練になっていると感じています。
最後は「他者評価」です。
先ほどお伝えした研修生同士のコメントだけでなく、教育研修課も研修生の動画にコメントを残すことができます。さらに研修生の上長も動画を確認し「現場では少し違った表現の仕方もありますよ」とコメントを残せる仕組みになっています。研修現場での学びと、現場上長のアドバイスを連携することで、TPOに応じた対応ができるように整えております。
現場の上長が教育研修課のコメントを見ることは、研修生にとってはプレッシャーでもあります。しかし、これまでブラックボックスだった教育研修課の指導が現場との情報共有の場へと変化し、現場の要望に沿った形で教育を進めていけるため、現場と教育研修課の架け橋になることを期待しています。
研修生、講師、研修運営者の三方よし AI音声スライド
当社では、4月から6月までの間はMR試験の対策、7月から9月末は自社製品(漢方薬)の教育を行っています。自社製品の教育を行う場合、2021年度までは一つの製品に対して専門知識を持つ社員3人がかりで資料を作成し、230分の講義を行っていました。2022年度からは、UMU活用で専門知識を持つ社員1人、講義を110分にまで短縮することができました。講義を短縮できた分、研修生の自学自習の機会を35分追加し、研修生主体の研修へシフトしています。また、講義時間の短縮により、質疑応答の時間も多く取っています。2021年度までの研修では質疑応答の時間が不足することが多くありましたが、2022年度の研修では分からない箇所を集中して質問でき、研修生側の満足度が非常に高くなっています。運営側も質疑応答を受け、研修生が分からない点を把握できるため、さらにブラッシュアップしたコンテンツを作成できると考えています。
このような研修生主体の研修へシフトできた理由は、UMUの「AI音声スライド」機能を利用し、従来の対面型講義を全て動画に変え、各自の学習の時間に割り当てる方向へ転換したことにあります。「AI音声スライド」機能はパワーポイントスライドと講師原稿、講師の写真をアップロードすると、講師が話している音声付きの動画コンテンツを作成できるというものです。
「AI音声スライド」の活用は、研修生、講師、運営側の三者のいずれにもメリットがあります。
講師側には、当日の講義に対する負担感を軽減できるメリットがあります。これまでの対面型の講義では、講義の質が各講師の話すペース、声色、伝達スキル等に依存していましたが、UMUの「AI音声スライド」は、原稿とスライドがあれば、AIが平均的な話し方で講義をするので、講師側のスキルの差がなくなりました。また、伝え漏れや言い間違えのリスクをなくすことができます。
研修生側には、何度も動画を聞き返すことができる、動画を個人の理解するペースに合わせた再生速度に変更できるなどのメリットがあります。講師側には、講義の準備時間、講義のための時間的拘束が不要になる、正確かつ不足のない情報伝達ができるといった利点がありました。
運営側には、スライド作成者が部署異動になっても、動画コンテンツが教育研修課に残り継続して動画をメンテナンスできるので、コンテンツの財源として残しやすくなるという良さがありました。AIが話しているため、まだたどたどしさが残る部分もあります。この音声の聞きやすさにおいても、UMU側で徐々に改善されているため、当社では字幕追加や画像の有無などで加工しながら活用しています。
集中を途切れさせず、モチベーションを上げる2年目研修へのシフト
入社2年目の研修では、年に2回、2日間にわたり製品教育を行っています。2021年度まで研修前の課題は与えず、研修後にテストを実施するインプット中心の一方的な講義が行われていました。2022年度からはインプットの時間を減らし、研修前、研修中、研修後それぞれでUMUを活用し、知識定着を促すようなアウトプット中心の仕掛けを設定していきました。
一つ目のアウトプットは事前課題です。
普段、医師に説明するときに使用しているリーフレットについて「先生にどのように説明しているか教えてください」と課題を出し、準備してもらいました。いざ準備をするとなると、普段全然話せていないことに気づく機会となります。研修生はそこで初めて教科書やリーフレットを読みながら原稿をつくり、動画を作成します。これにより、現場で実践的に活用できる事前課題を設定することができました。
研修中は、事前課題の修正、その他の製品についての補足講義を行います。UMUを利用する前は、講義中に指名された研修生のみが質問に回答し、それ以外の人はホッとして休憩・内勤し、集中力が途切れる場面が見られました。今年度からは、UMUを使って全員が同時に課題に回答する方法に変更しました。研修生に共有している画面では回答速度によって研修生のランキングが表示されるため、講義に集中し、有効的に時間を使う姿が見られました。
また、回答は全員分UMU上の画面で一覧表示でき、研修生同士の回答の比較が可能です。これまで全体の研修では1問に対し研修生が1人ずつ回答していましたが、UMUを使うことで1問に対し全員がオンラインで回答し、また、お互いのコメントを見比べながら「〇〇さん、すごくよい表現だね」「〇〇さん、この点はもう少しこんな風に変えたらいいんじゃないですか」とコメントをしあっています。他の研修生のコメントや発言、知識量を目の当たりにし、自分と他の研修生とを比較し、発奮する姿もみられました。この取り組みによって、相互啓発を促す機会となっています。
研修後の課題は、1年目の研修生と同様、動画投稿です。
研修生の動画に対して教育研修課がコメントを残し、直属の上長が教育研修課のコメントを確認、補足する。改めてこの仕組みは、教育研修課と現場との橋渡しになります。より現場に即したアドバイスを研修生に与えられるため、実際に医師と話をした際も会話のラリーが続けられ、医師のニーズを引き出し、自信を持って説明できるMRになると考えています。
今後のUMU活用方法について
過去の研修においては、学習機会のピークは研修当日のみで、研修後の学習機会がほとんどないような状況でした。今回のUMUトライアル導入を通して事前学習、研修当日、事後学習、と分散して学習に取り組むことで、学習機会の平準化に繋がることがわかりました。今後継続してUMUを活用することで、自ら考え、自ら行動する社員教育ができるよう自学自習の習慣化に取り組みたいと考えています。
また、今回は、透明性の高い学習スタイルに抵抗がない新人と、入社2年目の社員へのトライアル導入を行いましたが、今後は全MRへ向けて導入していくことを検討しています。匿名性が担保されない状態で、自分の意見を出すことに抵抗感をもつ人もいるかと思います。人による感じ方の差異がある部分かとは思いますが、組織で働く以上、相互啓発は必須であると考えています。研修を提供する教育研修課としては、今後も研修生の相互啓発を促していきたいです。
大手企業様をはじめとして、全社学習プラットフォームの活用、営業教育、新入社員教育等、様々なシーンでUMUをご利用いただいております。
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