チャットボット機能でメンバーの行動変容を促す!大手製薬企業が挑む「新チームリーダー研修」の実態

繰り返し学び、確実に身につける「3セッション+実践期間」

MRのプレイヤー兼マネージャーとしてチームを率いるチームリーダー。当社ではこのたび、その重要な役割を担うチームリーダー約100名を対象に実践型コーチング研修を実施しました。この研修では、行動・能力・動機の3種類のコーチングを学び、実践を通じてスキルを磨くことを目的としています。Webを活用しながら学習と実践を繰り返すことで、即戦力となるようなリーダーを育成するプログラムです。

 

研修は「学ぶ→実践する→振り返る」というサイクルを3回繰り返し、各セッションの後には、チャットボットなどを活用しながら実際のメンバーにコーチングを実施する実践期間を設けています。内容としては、まずはメンバーの行動変容を促す「行動コーチング」に始まり、スキル向上を目指す「能力コーチング」、最後にモチベーションを高める「動機コーチング」へと進んでいきます。インプットとアウトプットをバランスよく組み合わせることで、知識を確実に習得できる設計となっています。

 

 

Web研修でありながら、動画視聴だけで終わらないのが本研修の特長です。UMUを活用した動画視聴、個人ワーク、トレーニング、グループディスカッションを通じて、理論の理解を深めます。​​これらはUMUの「パフォーマンスラーニングデザイナーコース」を受講したことからインスピレーションを受けて構成したものです。インプットとアウトプットを高速で繰り返すことで、効果的な成果が得られるだろうと期待して設計しました。

 

年齢の近いメンバー同士が集まることで意見交換が活発になり、スムーズな学習環境が生まれるよう配慮しています。また、世代ごとのデジタルツールへの習熟度の違いを考慮し、研修の運用をより円滑に進めるために年齢別の8グループに分けました。

メンバーの意識・行動変容をアンケートで可視化

この研修の目的は、チームリーダーがメンバーの主体的な行動を支援できるようになることです。研修効果を測定するために、当社でMRを対象に実施している半年ごとの定期サーベイを活用しました。このアンケートは一般的なモラルサーベイに近い形式で行われており、その中で当社が2つの具体的な目標を設けました。

 

 

1つ目は、主体性に関する項目のポイント向上です。主体性の向上が実績にも相関すると考えられることから、メンバーの主体的な行動をチームリーダーが支援することで、業績への好影響を期待しています。2つ目は、チームリーダーがメンバーの行動や意識の変化を感じたと回答する割合を50%以上にすることです。研修後1カ月(実践期間中)にアンケートを実施し、実際の研修の効果を測定しました。

 

全体の集計結果をご覧いただくと、やる気及び主体性に関する指標について、統計上の差はないものの、平均値および中央値が前回・前々回と比較して上昇していることが確認できます。

 

 

研修後1カ月(実践期間中)に実施したアンケートの集計をご覧ください。第1セッション、第2セッション、第3セッションと、回を増すごとにメンバーに変化がみられたと回答した割合が増えていることがお分かりいただけるかと思います。

 

 

第1セッション後のアンケートでは、コーチング成果そのものの定義を各チームリーダーに委ねておりましたため、たとえばコーチングの結果として、いわゆる「行動」や「やる気」といった意識に関する回答よりも「新規顧客の開拓につながった」「営業成績につながった」といった成果に直結する回答が多く見られました。この点を踏まえまして、第2・第3セッションでは回答項目をコーチングプロセスの観点にあらかじめ絞り、チームリーダーに選択してもらう形式としました。このように第1セッションと第2・第3セッションではアンケートの様式に多少の差があるのですが、いずれも「成果が得られている」という結果が出ています。

セッションを重ねて育まれた「良い変化」

ここからはセッションごとの詳細なアンケート結果についてお話しします。

 

まず、研修後1カ月(実践期間中)のアンケートにて、コーチングを実践したのは91%と高かったものの、メンバーに対してコーチングの良い成果が得られたと回答した割合は目標の50%に未達の状況でした。

 

 

次に第2セッション(「研修期間後1ヶ月」実践期間中)のアンケートでは、83.8%がコーチングを実践しており、「活用できた」と答えた人数のうち「メンバー変化があった」と答えた割合が87.5%となりました。

 

 

最後の第3セッションでは、実践したのは98.1%と、もっとも高い値を得ることできました。また、コーチングを「活用した」メンバーのうち「メンバー変化あり」と答えたのは93.1%と前回よりも飛躍しました。

 

 

研修を通じて、多くのチームリーダーがメンバーの状態を深く理解し、適切な指示や支援の方法を考えるようになった様子が確認できました。メンバーの特性や状況を把握することが効果的なコーチングにつながるのだという認識が広がり、一度きりの研修ではなく3回にわたる継続的な学習を重ねることで、そうした理解がより深まっていったようです。

 

今回、まずはUMUを活用してインプットを行い、その後すぐにメンバーにコーチングを行うのではなく、まずは自身の考えを整理して情報を共有した上で、現場で実践するというプロセスを踏みました。結果的に多くの練習機会を得られ、より実践的なコーチングを体現することができたのではないかと思います。

コーチングが引き出す発言力と外務活動力

ここからは、コーチングを実践活用したメンバーに現れた、具体的な「好ましい変化」についてご説明します。

 

第2セッション後のデータによりますと、メンバーに見られた変化として最も多かったのは「自分の考えを発言するようになった」という点でした。これはチームリーダーがメンバーの発言を促すことができるようになったことを示しており、研修の成果の一つといえます。

 

 

特に、チームリーダー自身がすぐに答えを示すのではなく、メンバーに考える時間や発言の機会を与えるようになったことが、大きな要因となっているようです。こうしたアプローチにより、メンバーが主体的に意見を述べる場が増え、コミュニケーションの質が向上したことがうかがえます。

 

第3セッションでは「メンバーの外務活動への取り組みが積極的になった」という回答が最も多く寄せられました。これは、具体的な外務活動への関与をメンバーにしっかりと落とし込めた結果だと考えられます。ただし、この変化がセッションを重ねたことによるものなのか、第2セッションの能力コーチングと第3セッションの動機コーチングという異なるテーマの影響なのかは、明確には分かっていません。

 

 

具体的な外務活動としては、MRの業務の一環である「医師・病院関係者への講演会の案内」が挙げられます。あるチームリーダーのチームでは、売上に直結しにくい、あるいは参加者の見込みが少ない講演会を案内する際、これまで「案内の意味がないのでは」と感じるメンバーもいたようです。しかし、チームリーダーの指導により、単なる案内ではなく「案内を受けた医師がどう感じるか」という視点をもつようになりました。たとえ参加に至らなくても、医師が「自分のことを大切に思ってくれている」「気にかけてくれている」といった印象を与えられる可能性があると気づいたことでメンバーの意識が変わり、積極的に講演会を案内する姿勢へとつながったとのことです。

数値で検証する、チームリーダーのコーチングとメンバーの変化

チームリーダーのコーチング行動とメンバーの変化との関係を数値化し、どの要素が成果に結びついているのか、相関分析を行いました。データのスコアは、行動を「した」場合を2点、「しなかった」場合を1点、「不明」や「未回答」は0点とし、3回のセッションを通じて最大6点となる仕組みです。このスコアを用いることで、チームリーダーがどれだけ積極的にコーチングを実践し、それがメンバーの行動にどのような関連を持つのかを明らかにすることができます。

 

 

分析の結果、チームリーダーのコーチング実践回数が多いほど、成功事例の共有数が多い傾向が見られました。また、成功事例の共有数とメンバーの行動変化量の間にも一定の相関が確認されています。さらに、コーチングの実践回数とメンバーの変化量の間にも相関があり、これらの関係性が示唆されています。

 

このような分析から、メンバーの行動変容成果は、チームリーダーのコーチング実践回数と成功体験に要因しているといえるという仮説を立てることができます。

 

 

こちらの相関表は、先述の仮説をふまえて、チームの全体的な売上目標の達成率を追跡した内容です。メンバーの行動変容と9〜12月の実績に一定の相関が確認されており、メンバーの変化がチームの成果に影響を及ぼしている可能性が示唆されます。

コーチングの効果を阻む要因と課題

今回、チームリーダーがコーチングを実践することによってメンバーの行動変容が生まれるであろうという仮説のもと、当方の設計した研修を運用してきました。

 

 

実際に行動変容が見られたメンバーもいれば、そうでないメンバーもいましたが、特に「行動を移行できなかった人」について、その理由をいくつかの仮説として整理しました。たとえば「コーチングはそもそも必要ない」「自分のチームには関係ない」と考えているケースや「コーチングが必要な場面が分からない」「適切なフレーズが分からない」といったスキル面での課題も挙げられます。また、チームリーダー自身がコーチングの目的や意義を十分に理解していなかった可能性もあります。この点については、良い成果が得られた事例を積極的に共有し、コーチングの重要性をより広く認識させるべきだったと考えています。さらに「コーチングの必要性そのものを感じていない」というケースも一定数存在することが考えられ、そういった考えの人へのアプローチも今後の課題として浮かび上がりました。

 

 

行動移行がうまくいかなかった人が発生したその背景には、これまでチームリーダー向けの統一的な研修が存在しなかったことが影響していると考えています。営業スキル研修の一環としてコーチングに触れる機会はあったものの、体系的に長期間にわたって学ぶ機会はなく、結果としてコーチングの理解が浅いまま進んでしまった可能性もあります。実際に、チームリーダーにとって「コーチング」という考え方が明確に求められるのは今回が初めてのことだったため、インプットや理解に時間がかかったのかもしれません。

 

今回のコーチングについて営業マネージャーへの報告はすでに済ませていますが、一方で営業マネージャーからチームリーダーやメンバーへの具体的な指示内容を当方より案内することはしていませんでした。「こうした指導を行ってください」「このような支援をしてください」といった明確な指針を示さずに現場の判断に委ねていたため、今後はより具体的な方向性を持たせる必要があると考えています。

 

また、研修内でチームリーダーに「コーチングのフレーズを考えるように」と促してはいたものの、それが適切な指導として機能していたかどうかを確認する機会がなかったことも反省点です。その結果、コーチングというよりもティーチングに近い形となり、メンバーに考えさせる時間を与えず、チームリーダーが一方的に話してしまう場面もありました。今後はフィードバックの仕組みを強化し、適切なコーチングが実施されるように介入していく予定です。

UMUを活用したコーチング研修のさらなる展開に向けて

ここまでご紹介しましたように、UMUによるインプットを契機に当社では初めてとなる大規模なチームリーダー向けコーチング研修を実施した結果、メンバーのさまざまな行動変容や実績の向上に結びつきました。

 

 

特に今回のコーチング研修では「チャットボット機能」を導入しており、トレーニングの公平性を確保できるというメリットをチームリーダーやメンバーが最大限に享受できました。対面研修では講師役・受講生・オブザーバーが存在するため、待機時間が発生することが避けられません。チャットボットを活用することで、講師のスキルなどに左右されることなく全員が同じ基準でトレーニングを受けられるという利点は絶大です。さらに、チャットボットはすぐに返答を返すため、待ち時間なく繰り返しトレーニングを行うことができ、より効率的な学習環境を提供できました。

 

今後は、今回のコーチング研修をまだ経験していない新任チームリーダーにも継続して運用を行っていくほか、希望者にはE-Learningでの受講も推奨していく予定です。

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