学習体験の再設計が鍵。メインランドジャパンがUMUで構築した、新人の行動変容を促す「学習PDCAサイクル」の全プロセス
「良い研修とは、優れた学習体験のデザインそのものである」。株式会社メインランドジャパンの実践は、この言葉を証明している。同社は、新入社員研修が知識伝達だけで終わり、行動変容につながっていないという課題に対し、学習者一人ひとりがPDCAサイクルを回す一連の「体験」をUMU上で緻密に再設計しました。なぜフィードバックは口頭からテキスト中心に切り替えたのか?なぜ投票に発表者自身を参加させたのか?本記事では、学習効果を最大化するために練り上げられた、同社の「課題図書研修」の設計思想とその具体的なプロセスを、詳細に解説していきます。
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企業情報
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社名:株式会社メインランドジャパン
本社所在地:大阪府大阪市北区梅田2-1-3 桜橋御幸ビル12階
設立年月日:2014年
資本金:5,000万円
ホームページ:https://www.mljp.co.jp/
「学びっぱなし」を防ぐには?──学習者視点で捉え直した研修の課題
── 研修の再設計にあたり、課題をどのように捉えていましたか?
従来の「課題図書研修」が抱えていた最も根深い問題は、学習者の体験が「プレゼンして終わり」という点で途切れてしまっていたことでした。研修設計の視点で見ると、インプット(読書)からアウトプット(発表)まではあっても、その学びを次へとつなげるためのフィードバック、リフレクション(内省)、そして改善行動という、最も重要なプロセスが設計されていなかったのです。
これでは、学習者は「学びっぱなし」の状態に置かれてしまいます。結果として、学習効果は個人の意識の高さに完全に依存している状況でした。私たちは、この断絶された学習体験を、事前準備から実践、振り返り、そして次へのアクションまで、シームレスにつながる一つの「学習の旅(ラーニングジャーニー)」として再設計する必要があると考えました。これが、今回のプロジェクトの出発点です。
なぜUMUだったのか?──理想の学習体験を実装する「デザインツール」としての可能性
── その「学習の旅」を設計する上で、UMUはどのような役割を果たしましたか?
私たちがAI活用学習プラットフォーム「UMU」に見たのは、単なるLMS(学習管理システム)ではなく、理想の学習体験を実装するための柔軟な「デザインツールキット」としての可能性です。私たちが描いた学習ジャーニーの各ポイントにおいて、学習者の行動を自然に促すための仕掛けが必要でした。
例えば、「安全な環境で練習させたい」という意図には「AIエクササイズ」が、「多様な視点からのフィードバックを担保したい」という意図には「ノート機能」が、「客観的な自己認識を促したい」という意図には「アンケート機能」が、そして「内省を習慣化させたい」という意図には「動画課題」と「アンケート機能の組み合わせ」が、完璧に応えてくれました。一つのプラットフォーム上でこれらのツールを自由に組み合わせ、学習者の心理的な動きまで考慮した一貫性のある体験をデザインできる。UMUは私たちの設計思想を実現するための、最適なキャンバスだったといえるでしょう。
「学習者」を主語にした体験設計──行動変容を促す4つのデザイン原則
── 学習効果を最大化するために、特にこだわった設計のポイントを教えてください。
私たちは、学習者を常に主語に置き、4つの重要な体験をUMU上でデザインしました。
1.失敗を恐れず試行できる「練習体験」の設計
プレゼン本番の前に、UMUの「AIエクササイズ」で練習できる環境を設けました。これを必須にしなかったのは、「練習させられている」のではなく「自らの意思で準備する」という学習者の主体性を尊重したかったからです。いつでも、何度でも試せる安全な場を用意することが、本番のパフォーマンスを高める上で重要だと考えました。
2.フィードバックの質と量を最大化する「評価体験」の設計
プレゼン会のフィードバック体験は最もこだわった部分です。口頭の質疑応答を3名に絞ったのは、時間の効率化だけでなく、特定の人ばかりが発言する状況を避ける意図がありました。その代わり、オブザーバー全員にUMUの「ノート機能」でのテキストフィードバックを義務化。これにより、内気な先輩社員の貴重な意見も拾い上げるとともに、学習者は後から何度も読み返せる資産としてフィードバックを受け取れるようになります。
3.「当事者意識」を醸成する投票体験の設計
挙手による投票をUMUの「アンケート機能」に変えたのは、単なる効率化が目的ではありません。「お情け票」のような同調圧力を排除し、客観的なデータで自分の立ち位置を認識させる狙いがありました。さらに重要なのは、発表者である新入社員自身も投票に参加させたことです。これにより、彼らは単なる「評価される側」から、仲間の発表を真剣に聞き、評価基準を考える「評価する側」へと視点が切り替わります。この当事者意識が、学びの深さを大きく変えるのです。
4.「内省」を習慣化する振り返り体験の設計
研修をやりっぱなしにしないため、自身のプレゼン動画を「動画課題」として提出させ、自己評価を促すプロセスを組み込みました。自分の姿を客観的に見るという行為は、時に苦痛を伴いますが、最も成長につながります。さらに、他者の動画への評価と、UMUアンケートによる「振り返りレポート」をセットにすることで、自己評価・他者評価・そして次回への改善計画という内省のサイクルを強制的に回す仕組みを構築したのです。
設計の意図が成果に。──学習者と評価者の双方に生まれたポジティブな変化
── 緻密に設計された学習体験は、どのような成果につながりましたか?
私たちの設計意図は、期待以上の成果となって表れました。フィードバック数が約8倍に増加したという事実は、フィードバックの心理的安全性を高め、テキストで貢献しやすくしたデザインが成功したことの証左です。
また、学習者である新入社員からは「多くの先輩から多角的な意見がもらえて、次に何をすべきか明確になった」「同期のプレゼンを真剣に見るようになり、学びが2倍になった」という声が上がっています。評価する側の先輩社員からも「他の人のフィードバックが参考になり、自分の指導力向上にもつながった」という反応があり、学習者と評価者の双方にとって有益な学習環境をデザインできたと確信しています。
成功の設計図を武器に、あらゆる学びの場を再構築していく
── 今回の設計経験を、今後どのように活かしていきますか?
今回、私たちはUMUというツールを使って「効果的な学習体験とは何か」という問いに対する一つの答えを、具体的な設計図として手に入れることができました。この経験は、他の研修プログラムを開発・改善する上で、非常に強力な武器になります。今後は、この「学習PDCAサイクル・デザインモデル」を社内の標準設計として位置づけ、新入社員だけでなく、全社員の能力開発に応用していくことで、組織全体の学習能力を高めていきたいと考えています。
コンテンツを載せる前に、まず「学習者の旅」を描くことから始めよう
── 最後に、研修設計に悩む担当者へアドバイスをお願いします。
もし研修の効果に課題を感じているなら、新しいコンテンツを探す前に、一度立ち止まって「学習者の体験」を最初から最後まで見直してみてはいかがでしょうか。学習者が研修前、研修中、研修後に何を感じ、どう行動し、どう変化してほしいのか。その一連の「旅」をデザインし、その旅をサポートする最適なツールとしてプラットフォームを活用するという視点が、ブレイクスルーのきっかけになるかもしれません。私たちの試行錯誤が、そのヒントとなれば嬉しいです。
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まずはコレから!
学びが変わる。組織が変わる。
生成AI時代に成果を生む、
UMUのAIラーニング戦略と事例を公開
UMU(ユーム)は、2014年にシリコンバレーで誕生し、現在では世界203の国と地域で100万社以上、日本では28,000社以上に導入されているグローバルAIソリューションカンパニーです。AIを活用したオンライン学習プラットフォーム「UMU」を核に、学術的な根拠に基づいた実践型AIリテラシー学習プログラム「UMU AILIT(エーアイリット)」、プロンプト不要であらゆる業務を効率化する「UMU AI Tools」などの提供により、AI時代の企業や組織における学習文化の醸成とパフォーマンス向上を支援しています。従業員が自律的に学び、AIリテラシーを習得・活用することで業務を効率化し、より創造的で戦略的な仕事に集中できる時間や機会を創出。これにより、企業の人的資本の最大活用と加速度的な成長に貢献します。