記憶の定着を最大化する脳科学的学習方法「間隔学習(スペーシング)」
現代のビジネスや教育の現場では、新たな知識やスキルの習得が常に求められています。ビジネススキル、製品知識、コミュニケーションスキルなど、さまざまな情報やスキルの確実な定着は、効率的な学習によって可能となります。
その中で、「間隔学習(スペーシング)」は、記憶の定着率を大幅に向上させる学習手法として、脳科学の視点からも注目されています。本記事では、間隔学習を取り入れて学習の効果を最大化するための具体的な方法と、その背後にある科学的なメカニズムについて詳しく探っていきます。
間隔学習の科学的根拠
間隔学習(スペーシング)は、学習内容を一度に詰め込むのではなく、時間を空けて繰り返し学ぶことで、記憶の定着を促進する手法です。
記憶の定着に関する「エビングハウスの忘却曲線」からもわかるように、学習内容を短期間に集中して繰り返すのではなく、時間を空けて繰り返すことで、記憶の保持期間を大幅に延ばすことができるとされています。
この手法は、情報を一度に大量に学習する「一括学習」とは対照的です。一括学習では短期的には覚えられても、長期的には忘れやすくなるのに対し、間隔学習は学習の間隔をあけることで、脳が情報を長期的に保持するように働きかけます。これが、学生がよく行う「一夜漬け」が効果的でない理由です。
さらに、間隔学習は知識だけでなく、実践的なスキルやビジネスに必要な能力の習得にも有効です。たとえば、プレゼンテーションスキルや問題解決能力といったスキルも、間隔をあけて繰り返し練習することで、実践での効果を最大化できます。
間隔学習のやり方
間隔学習の効果を最大限に引き出すためには、学習のタイミングと内容を計画的に分散させることが重要です。以下に、効果的な間隔学習の実践方法を紹介します。
① 学習スケジュールの設計
間隔学習を効果的に行うための第一歩は、学習スケジュールの設計です。学習内容を小分けにし、学習と復習のタイミングを計画的に設定します。
例えば、新しい知識を学んだ直後に最初の復習を行い、その後、1日後、3日後、1週間後、1か月後と、学習の間隔を徐々に広げていくことで、記憶の定着率を向上させることができます。こうした間隔を設けることで、脳は「この情報は長期的に重要である」と認識し、長期記憶として保持しやすくなるのです。
② インターバルテストの導入
間隔学習を強化する方法の一つに、インターバルテスト(間隔をあけたテスト)の導入があります。学習後に一定期間を空けてテストを実施することで、学習者は学んだ内容を再び思い出す機会を得ます。
この学んだ内容を再び思い出す機会は、以前に紹介した「想起学習」にあたります。
つまり、間隔学習を取り入れることで記憶に定着しやすいタイミングで学習できるのはもちろん、想起学習も効率よく取り入れることができるため、より大きな学習効果を得ることができるのです。
③ マイクロラーニングの利用
間隔学習を効果的に行うためには、短時間で学習できる「マイクロラーニング」を活用するのも有効です。マイクロラーニングは、小さな単位で学習を行い、その学習を定期的に繰り返すことで、知識を無理なく定着させます。
間隔学習では、どうしても復習の回数が増えてしまいます。そのため、マイクロラーニングで学習しなければ、最終的に復習だけで数時間もかかってしまいます。
マイクロラーニングのやり方は、例えば、1回の学習時間を5~10分程度に設定し、それを数日おきに行うことで、学習者は長期間にわたって効率的に学習を続けることができます。これにより、間隔学習の原則を日常的な学習プロセスに取り入れやすくなります。
間隔学習(スペーシング)は、記憶の定着を強化し、学んだ知識やスキルを長期的に保持するための強力な学習手法です。本記事で紹介した学習スケジュールの設計、インターバルテストの導入、マイクロラーニングの活用などの手法を組み合わせることで、学習者は自発的に知識を想起し、より深く理解することができます。
これにより、知識やスキルが確実に定着し、現場での実践力を向上させることが可能となります。現代のビジネスや教育の現場で間隔学習を効果的に取り入れることで、学習者の潜在能力を引き出し、持続的な成長と成果を実現することができるのです。
【執筆者】株式会社HYBRID THEORY 代表取締役 丸山裕之 氏
栃木県で公務員を経験し独立。
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