職場において、コーチングは部下の成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための重要な手段です。しかし、効果的なコーチングを行うためには、まず心理的安全性を確保することが不可欠です。今回は、心理的安全性の重要性を科学的に解説し、それを確保するための具体的な戦略と、その改善によるメリットを紹介します。

 

心理的安全性とは

 

心理的安全性とは、個人がリスクを伴う行動や発言を恐れることなく行える環境のことです。この概念は、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱され、チームのパフォーマンスに大きな影響を与える要素として広く認識されています。心理的安全性が確保された環境では、部下は自由に意見を述べたり、失敗を恐れずに挑戦することができます。

コーチングで心理的安全性が必要な理由

コーチングにおいて、なぜ心理的安全性が必要かというと、コーチングの前提条件として、「相手が本心を恐れなく発言しなければいけない。」という理由があるからです。

もし、上司が日常的に部下に対して相手に恐怖や不安を感じさせるようなコミュニケーションをとっていて、部下が本心を言えない状態だったらどうでしょうか。例えば、何か発言した時に「お前の意見は聞いてない」といったような言動です。

日頃からそんなコミュニケーションをとっていたら、いざコーチングする際に「困っていることないか？」と問いかけても、部下は、「きっとまた、「そんなくだらないこと言って」と言われるんじゃないか」と不安になり本心を話しません。つまり、一向にコーチングは進まないのです。

コーチングにつながる心理的安全性の確保

それでは、コーチングにつなげるためには日々どのようなコミュニケーションを取れば良いのでしょうか。

それは、日頃から質問するようなコミュニケーションをとり、相手に「私は発言していいんだ。僕の意見は求められているんだ」と感じさせることです。

そうすることで、コーチングする際も部下は不安に思うことなく、発言できるのでスムーズなコーチングが可能になります。

もちろん、日頃から質問をするコミュニケーションは、可能な限り否定せず、ポジティブなフィードバックを返しましょう。

 

心理的安全性を確保することは、効果的なコーチングを実現するために欠かせない要素です。オープンなコミュニケーションの奨励、ミスを許容する文化の構築、ポジティブなフィードバックの提供、リーダーシップの透明性と一貫性といった具体的な戦略を実行することで、部下の成長と組織の成功を促進することができます。心理的安全性を重視したコーチングによって、部下は自信を持って挑戦し、自己の能力を最大限に発揮できる環境が整います。

 

【執筆者】株式会社HYBRID THEORY　代表取締役　丸山裕之 氏
栃木県で公務員を経験し独立。ハーバード大学やスタンフォード大学などの論文や研究データ、脳科学・心理学の文献などを年間700冊読み込む。科学的に効果が実証された方法で社内研修や、組織構築を提供する株式会社HYBRID THEORYを設立。また、脳科学に基づいた学習方法を用いた学習塾を運営している。能力や才能に関わらず、誰でも結果の上がる「科学的に正しい方法」を伝えて、個人の人生の満足や会社の利益向上を目指している。

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