上から目線での指導による信頼関係の欠如とその解決策
職場において、上司が部下に対して上から目線で指導することは、信頼関係の構築に大きな障害となります。上から目線の指導は、部下の意見や感情を無視し、自己中心的な態度が表れるため、部下との間に信頼関係を築くことが難しくなります。
ここでは、上から目線での指導によるデメリットを科学的に解説し、信頼関係を構築するための具体的な戦略と、その改善によるメリットを紹介します。
上から目線での指導のデメリット
信頼関係の欠如
上から目線で指導されると、部下は上司に対して不信感を抱くようになります。
自己決定理論に基づく研究によれば、他者からの支配的な態度は、個人の自主性や内発的な動機づけを損なうことが示されています。上司が上から目線で指導することで、部下は自分の意見が尊重されないと感じ、不安や疑問を話すことを躊躇するようになります。
また、モチベーションは著しく低下するため、仕事のパフォーマンスも低下していきます。
心理的安全性の低下
心理的安全性とは、個人がリスクを取っても安心して自分の意見を表明できる環境を指します。
上から目線の態度は、相手に不安や恐怖を植え付けている可能性があり、心理的安全性が大きく損なわれます。
会話をするたびに上から目線で対応する上司と会話したいと思うでしょうか。残念ながら、その部下は会話を避けるようになります。
結果として、生産性とパフォーマンスは著しく低下するでしょう。
また、この場合、上司が軽い気持ちや、部下にハッパをかけるために、あえて使用する場合もありますが、それは部下には伝わっていません。
必ず、態度でなく、言葉で伝えるようにしましょう。
エンゲージメントの低下
上から目線の指導は、部下のエンゲージメント(仕事への熱意やコミットメント)を低下させます。上司との関係が良好でない場合、部下のエンゲージメントは著しく低下し、生産性や業務満足度が減少します。
また、生産性の低下だけでなく、離職率や遅刻、欠勤などのリスクも大幅に高まります。
エンゲージメントは、企業が担保するべき重要な要素ですので、上から目線の対応は避けるようにしましょう。
信頼関係を構築するための解決策
共感とリスニングの実践
上から目線で指導する代わりに、共感とリスニングを重視しましょう。部下の意見や感情に対して真摯に耳を傾け、共感することで、部下との信頼関係を築くことができます。
例えば、「あなたの意見を聞かせてください」といったフレーズを用いることで、部下は自分の意見が尊重されていると感じます。
また、「私の意見は求められているんだ」という気持ちになり、心理的安全性とエンゲージメントの確保にもつながってきます。
批判ではなく建設的なフィードバック
部下のミスや課題に対して批判するのではなく、建設的なフィードバックを提供しましょう。具体的な改善点を示しつつ、努力や進捗を評価することで、部下の成長をサポートし、信頼関係を強化することができます。
例えば、「ここはこう改善すると良くなると思うよ。でも、努力している点も評価しているよ」と伝えることが効果的です。
ポジティブフィードバックは、部下の自信を高めるほか、上司との信頼関係を強固にします。
結果として、期待に応えようとする気持ちが強まり、生産性が向上していきます。
定期的な一対一のミーティング
週の中で数回、数分でいいので定期的な一対一のミーティングを設けることで、部下とのコミュニケーションを深めることができます。ミーティングでは、部下の目標や進捗を確認し、フィードバックを行うだけでなく、部下の悩みや課題についても話し合う場としましょう。
しかし、ここで重要な注意点があります。ミーティングするたびに、欠点や不足点の会話だけされてしまうと、結果として部下はそのミーティングが大きな苦痛になってしまいます。
先ほども述べたような、建設的なフィードバックを必ず入れるようにしましょう。
上から目線での指導は、部下との信頼関係を損ない、職場全体の生産性や創造性に悪影響を与える可能性があります。
しかし、共感とリスニングの実践、建設的なフィードバック、といった具体的な戦略を実行することで、信頼関係を築き、部下の成長とエンゲージメントを促進することができます。
そして、これらの対策は、上司の訓練や、環境の構築により担保することができます。
これらのアプローチを取り入れることで、部下は自分の意見が尊重され、安心して働くことができる環境が整い、結果として組織全体の成功に繋がるでしょう。
【執筆者】株式会社HYBRID THEORY 代表取締役 丸山裕之 氏
栃木県で公務員を経験し独立。
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