【脳科学的質問技術】質問の回答を加速させる「理由づけ」
営業戦略の核心には、お客様の心を探る質問技術が不可欠です。
営業において、質問は単なる情報収集の手段ではなく、お客様の心の奥深くにある本当のニーズや願望を理解するための重要な工程です。
そして、質問を通じてお客様の考えを引き出し、その回答からお客様の潜在的な問題やニーズを見つけ出すことができます。
心理学者エリック・バーンは、「質問は人々を動かすための最も強力な手段の一つである」と述べています。
今回のコラムでは、質問の回答を加速させる「理由づけ」についてご紹介いたします。
いざ実践すると難しい質問
質問が重要なことは理解していても、多くの営業パーソンが適切な質問を行えていないことがあります。
その理由のひとつに、質問をしすぎることで不快な思いをさせてしまうのではないかというメンタルブロックがあります。
お客様を質問攻めにしてしまうと、お客様は不快に感じ、私たちとの間に壁を設けることがあります。
回答を促す「理由づけ」の枕詞
お客様に不快な思いをさせず、かつ、自分も質問がしやすくなる、とっておきの方法があります。それが「質問する理由を伝える」ことです。
実際に「質問をする理由」を枕詞として質問に付け加えるだけで、みなさんは質問がしやすくなり、さらに、お客様が質問に答えてくれる確率が 1.5 倍も高まることが研究でわかっています。
コピー機を既に使っている人に対して、 いくつかの異なる条件で「先にコピーを取らしてくれないか」とお願いをする実験です。
●Aグループ… 単純なお願い。
「失礼ですが、先にコピー機を使わせてもらえないですか?」
→60%がイエスと許可をした
●B グループ… 理由付きでのお願い。
「急いでいるので、先コピー機を使わせてもらえますか?」
→94%の人がイエスと許可した
●C グループ…弱い理由付き。
「コピーを取る必要があるので、先にコピー機を使わせてくれませんか?」
→90%の人がイエスと許可した
このように、人は行動に対して明確な理由が提示されると、行動を承諾する確率が約 1.5 倍に増加することがわかっています。
特に C グループは「コピーを取る必要があるので」というとても弱い理由ですが 90%もの人が許可してくれました。
つまり、相手に質問する前に、質問する理由を伝える枕詞を使うことで、みなさんの質問はスムーズに進み、相手も不快な思いをすることなく自然に回答をしてくれるようになります。
また、この理由づけの枕詞に特段秀逸な言い回しは必要ありません。C グループのように当たり前の言葉で質問の理由を伝えるだけでも、質問に対する回答は非常にスムーズになります。
質問を促す理由づけの枕詞の例
- ベストなご提案をしたいので、お伺いしてもいいですか?
- 御社のビジョンの実現のためにもお伺いしたいのですが…
- 御社の課題解決のためにお伺いしたいのですが…
- いただいたお時間を無駄にしないためにも確認しておきたいのですが…
このように、質問をする理由をつけるだけで相手がしっかりと質問に答えてくれる可能性は 1.5 倍上がり、こちらとしても、スムーズに質問に入ることができるので、まさに一石二鳥の方法なのです。
営業活動において、お客様への質問はとても重要な意味を持ちます。しかし、質問をすること自体にハードルを感じている人も少なくありません。
しかし、質問やその前の枕詞は、センスや才能ではなく、練習によって誰もが習得できる技術です。
日頃から、営業における質問や枕詞のレパートリーをたくわえ、本番でスムーズに発揮できるよう練習すれば誰でも効果を発揮できます。
質問がスムーズに行けば、お客様のニーズにマッチした提案ができ、みなさんの営業の成果に繋がっていきますので、ぜひ活用してみてください。
これからも、科学的根拠に基づいた効果的な営業テクニックを提供していきますので、ご期待ください。
【執筆者】株式会社HYBRID THEORY 代表取締役 丸山裕之 氏
栃木県で公務員を経験し独立。
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