カンファレンスでの効果的かつ効率的な学び方

現在、世界最大規模の人材開発・組織開発関連イベント、「ATD-ICE(International Conference & Expostion)」が今年も開催されています。6月には、ライフサイエンス業界の研修・教育の専門家のためのグローバルなネットワークであるLTEN(Life Sciences Trainers & Educators Network)が、年次総会「LTEN2024」を開催します。今回のコラムは、そんなカンファレンスでの効果的かつ効率的な学び方をご紹介いたします。

 

興味がある内容は積極的に受講しよう

自分の興味があるテーマを学ぶとき、ドーパミンの分泌によって学習能力、集中力、記憶力が向上します。

また、好奇心が記憶力を強化することも科学的に証明されています。興味を持って学ぶと、脳の報酬系が活性化し、やる気を増加させるだけでなく、情報を長期記憶へと移行させる海馬も活性化されます。このプロセスにより、記憶力が大幅に向上するのです。

もし、特に興味を引かれるテーマがあれば、積極的にそのセッションに参加することをお勧めします。

 

 

積極的に情報を取りに行く姿勢が大切

 

カンファレンスでの学びは、自ら情報を得る積極的な姿勢が重要です。

人間の脳は、無関心な状態や義務感だけで学ぶと、学習効率が著しく低下します。逆に、積極的に学習すると学習能力を著しく高めることができます。

同じ時間とエネルギーを投資するのであれば、より多くを吸収し、知識を残すために積極的な学習を心掛けましょう。

 

 

学ぶ内容を事前にチェックし、軽く予測を立てる

1、予想と異なる学習内容に遭遇した際、人間の脳は新たなつながりを作り出し、学習が促進されます。

事前にカンファレンスのアジェンダを確認し、予測を立てておくことで、当日の学びに対する洞察が深まり、知識の定着が劇的に改善されます。

 

2、カリフォルニア大学の研究チームによると、読書時にすべてを読む必要はなく、まずは見出しや目次、キーワードをチェックして関連する情報を探す方が効果的だといっています。

カンファレンスでも同様のアプローチを取り、全てを記憶しようとせずに、自分が学びたいポイントを事前に特定しておくことが重要です。これにより、内容の消化不良を防ぎながら、効率的に学びを進めることができます。

 

ノートは手書き推奨

プリンストン大学の研究によると、タイピングよりも手書きでのノート取りが学習効率を高めることが確認されています。手書きは思考を活性化し、より深い学習につながるため、タイピングが特に便利な状況でない限り、手書きでの記録を心掛けてみましょう。

 

 

効率的な休憩の取り方

カンファレンスは長時間にわたり集中が求められるため、効率的な休憩が必須です。

・ポモドーロテクニックの活用: 短期間の集中と休憩を繰り返すことで、持続可能な学習が可能です。講義の合間は、5分で良いのでしっかりと休息を取るようにしましょう。

 

・自然を活用した休憩: ハーバード大学やミシガン大学の研究によると、自然を眺めることで学習効率が向上します。休憩時にはスマホを避け、窓から見える街路樹や空を見るだけでも効果があります。自然の中での学習は、集中力を2倍にすることがイリノイ大学の研究で示されています。

 

・休息時のスマホ使用はNG :スマートフォンには、メッセージの返信やニュースの確認など、脳を使用したり、覚醒させる効果があります。休息とはリラックスを必要としますが、スマートフォンはその逆をもたらしますので、みたい気持ちを抑え、しっかりと休むようにしましょう。

 

・仮眠する:仮眠は脳疲労をとり、集中力を司るウィルパワーを回復させる効果があります。仮眠することで、学習能力や仕事のパフォーマンスが著しく高まることが確認されていますので、可能な場合は5分でいいので仮眠を取るようにしましょう。

 

・ブドウ糖の摂取:長時間の学習や集中力を必要とする学習の場合、脳は非常に多くのエネルギーを使用します。この脳のエネルギーはブドウ糖を摂ることによって回復可能なので、カンファレンスの間にラムネなどを食べてブドウ糖を摂取すると、記憶力や集中力が高まります。

 

カンファレンス中はスマートフォンの通知をオフに

マルチタスクは集中力や学習能力を著しく低下させ、IQを8歳児のレベルまで下げることが研究で明らかにされています。このマルチタスクは、タスクを複数同時進行した時に発生しますが、気になることがあるだけでもマルチタスクになってしまうことがわかっています。

スマートフォンのメッセージ通知や、SNSの更新情報などは、たとえその時見なかったとしても、脳内に残り続け、マルチタスクを発生させることがわかっています。

カンファレンス中はスマートフォンの通知をオフにし、バッグに入れて視界から外しましょう。これにより、気が散ることなく学習に集中することができます。

 

 

メタ認知を活用する

メタ認知とは、自分が何を知らないか、どの分野を特に学ぶ必要があるかを自覚することです。この自己認識を持つことは、学習効率を大きく向上させます。

研究によると、才能が成績に及ぼす影響は10%程度ですが、メタ認知は成績に対して17%もの大きな影響を与えることが示されています。

つまり、自己の不足している知識を事前に把握し、それに焦点を当てて学ぶことで、非常に効率的に学習することができるのです。

 

十分な睡眠を確保する

カンファレンスは日々続くことが多く、通常早朝から始まることが多いです。そのため、十分な睡眠を取ることが極めて重要です。その理由は以下の通りです

 

1.記憶の定着を促進

 

人間は学習内容を記憶に定着させるために、特にレム睡眠を必要とします。一般的に8時間の睡眠ではレム睡眠が5サイクル訪れますが、睡眠時間が5時間に短縮されると、レム睡眠は3サイクルに減少します。
これにより、記憶を定着させる回数が物理的に減少するため、学習内容の記憶定着が不十分になり、学習効果が低下します。

 

2.ウィルパワーの回復

 

粘り強さや集中力は「ウィルパワー」というエネルギーに依存します。このウィルパワーは日常生活で消耗し、睡眠によって回復します。
睡眠時間が不足すると、ウィルパワーが十分に回復せず、翌日のカンファレンスでのパフォーマンスが著しく低下します。大谷翔平選手も睡眠を大切にしていますが、この理由からだと考えられます。

 

 

会場を出た直後の10分間の復習

人間は学習内容をアウトプットすることで記憶を定着させます。それと同時に、習得した知識は1日で約70%も失われることが知られています。

この急激な記憶の喪失を防ぐために、学んだその日のうちに10分間の復習を行うことが非常に効果的です。スタンフォード大学の星教授によると、学習の最後に内容を10分でいいので思い出すだけで、記憶の定着が大幅に改善されることがわかっています。
この際、メモを読み返すのではなく、できるだけメモを見ずに思い出すよう努めることが重要です。

 

 

座りっぱなしを避け、適宜立ち上がる

長時間座り続けるのではなく、たまには立ち上がることで学習の定着率を高めることができます。ニューサウスウェールズ大学の研究によると、学習後に5分間歩くだけで、男性は記憶力が10%向上し、女性ではほぼ50%も改善されることが確認されています。
このように、軽い運動は学習効果を促進させるため、カンファレンスでのセッション間には立ち上がったり、短い散歩を取り入れることが効果的です。

 

 

水分補給を忘れずに

カンファレンスでは、集中して学習する。あまり水分補給する時間ももったいないような感覚になり、水分補給を怠りがちです。しかし、水分補給は学習効率を下げるだけでなく、水分を取ることにより、集中力が10%も回復することが研究で明らかになっています。集中力や深い学びを必要とするカンファレンスでは、積極的に水分補給するようにしましょう。

 

本日ご紹介した方法をぜひ活用いただき、カンファレンスでの多くの学びを効率的かつ効果的に獲得していきましょう。

 

【執筆者】株式会社HYBRID THEORY 代表取締役 丸山裕之 氏
栃木県で公務員を経験し独立。ハーバード大学やスタンフォード大学などの論文や研究データ、脳科学・心理学の文献などを年間700冊読み込む。科学的に効果が実証された方法で社内研修や、組織構築を提供する株式会社HYBRID THEORYを設立。また、脳科学に基づいた学習方法を用いた学習塾を運営している。能力や才能に関わらず、誰でも結果の上がる「科学的に正しい方法」を伝えて、個人の人生の満足や会社の利益向上を目指している。

 

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