ATD ICE 2025現地参加、デイリーレポート(DAY4:5月21日) – 未来を形作る人材開発の集大成、そして次なるステップへ –

2025年5月18日(日)〜5月21日(水)まで、アメリカ・ワシントンD.C.にて、世界最大規模の人材開発・組織開発関連カンファレンス、「ATD-ICE(International Conference & Exposition)」が開催されました!
本大会には、総勢8,400名が参加し、そのうち1,300名がアメリカ国外からの参加者で、世界83カ国から人材開発のプロフェッショナルが集いました。日本からの参加者は146名で、国別では第3位の規模となりました。
ATD ICE 2025現地参加者、UMU現地レポートチームによるデイリーレポートも本日が最終日。本日はDAY4、5月21日(水)の熱気あふれる現地の様子と、4日間を締めくくる重要な学びのポイントを速報します!そして、来年のATD ICE 2026 ロサンゼルス大会へと続く、未来への展望もお届けします。
UMUがATD ICE 2025に参加する理由
人材開発の最新トレンドとベストプラクティスを学ぶため、私たちUMUは毎年ATD ICEに参加しています。
ATD ICE 2025は、世界最大規模の人材開発・組織開発関連イベントであり、世界約80カ国以上から10,000名を超える参加者が集結しました。このグローバルな学びの祭典では、業界のトップランナーによる基調講演、専門性を深める多種多様なセッション、そして最新のHRテクノロジーやソリューションを紹介する大規模な展示会などが開催されました。
私たちがこのイベントに参加する主な目的は以下の通りです。
- グローバルな知見の獲得: 世界の成功事例や研究成果から、日本の組織や個人に活かせる実践的な知識を吸収します。
- ネットワーキング: 各国の専門家や実務家との交流を通じて、新たな視点や協業の可能性を探ります。
- 最新ソリューションの把握: UMUのサービスを進化させるためのヒントや、お客様に提供できる新しい価値を見つけ出します。
UMUは、これらの貴重な情報を日本の人材育成に関わる皆様にいち早く、そして分かりやすくお届けし、皆様の組織と個人の成長に貢献できるよう努めてまいります。
セッション参加レポート(DAY4)
DAY4、カンファレンスの最終日も、示唆に富んだセッションが展開されました!私たちUMU現地レポートチームが参加したセッションの中から、特に注目すべき2つのセッションをピックアップしてご紹介します。
Closing Mainstage Session with Seth Godin: Leading with People The Keys to an Effective Talent Development Strategy(クロージング基調講演 セス・ゴーディン氏:人と共に導く 効果的な人材開発戦略の鍵)
スピーカー: Seth Godin (セス・ゴーディン) / Teacher, Author, Entrepreneur
セッション形式: 基調講演
キーワード: リーダーシップ, 組織文化, 人材開発戦略, 心理的安全性, 意義のある仕事, AI時代の人間性
〈セッション概要〉
マーケティングのグルとして名高いセス・ゴーディン氏が、ATD ICE 2025のクロージングを飾り、AIが急速に進化する現代において、人材開発戦略の中心に「人」を置き、意義のある仕事を通じて組織を成功に導くための鍵について熱弁を振るいました。リーダーはマネージャーとは異なり、自ら進んで変化をリードし、他者が自発的に追随するような環境を創り出す存在であると説きました。
〈主要ポイントと学び〉
リーダーシップの本質 – 管理ではなく、導くこと:
- ゴーディン氏は、「マネージャーは権力と権限を使って昨日と同じことをより速く、より安くやらせようとする。一方、リーダーは自発的に『あちらへ行こう、誰か一緒に来る人は?』と問いかける存在だ」と定義しました。
- 真のリーダーシップとは、肩書きや権力ではなく、ビジョンを提示し、人々が自ら進んで貢献したいと思えるような「意義(Significance)」を創造することにあります。
「人間であること」の価値の再認識:
- AIが多くの定型業務を代替できるようになる時代だからこそ、「人間ならではの判断力、創造性、共感、そして繋がり」の価値がますます高まると強調されました。
- 「仕事が定義できるなら、AIはおそらくそれを実行できる。工場の効率を上げることはもはや前進の道ではない」と述べ、効率性追求から人間的価値の創出へと軸足を移す必要性を訴えました。
- 最高の仕事とは、給与や昇進だけではなく、「達成感」や「自律性」といった人間的な欲求が満たされる仕事であるという調査結果を提示しました。
心理的安全性の重要性と「賢い失敗」を許容する文化:
- 人々が最高のパフォーマンスを発揮するためには、失敗を恐れずに挑戦できる心理的安全性が不可欠です。リーダーは、結果だけでなくプロセスを重視し、良い意思決定が必ずしも良い結果に繋がるとは限らないことを理解する必要があります。
- 「Page 19 Thinking」というコンセプトを紹介し、誰もが未完成のアイデアを出し、他者がそれを改善していくプロセスを奨励することの重要性を説きました。「最初のドラフトが悪かったからではなく、良い仕事をしたからこそ、他の誰かがそれを改善する扉が開かれたのだ」という考え方です。
文化の力 – 「ここではそうするものだ」という規範の創造:
- 組織文化は、「ここでは人々がどのように振る舞うか」という暗黙のルールであり、規律を隠し持ち、現実を創造します。「我々が交通渋滞に巻き込まれるのではなく、我々自身が交通渋滞なのだ」という比喩を用い、個人が集団の文化を形成するという視点を示しました。
- リーダーは、人々が誇りを持ち、自ら進んで貢献したくなるような文化を意図的に設計する責任があります。それは、尊敬と尊厳が与えられ、誰もが自分の仕事に「署名」できる(責任と誇りを持てる)ような環境です。
「意義の歌 (Song of Significance)」を歌う:
- ミツバチの群れが冬を越した後、古い女王蜂を含む成蜂たちが巣と蓄えた蜜を若い世代に残し、新たな場所を求めて一斉に飛び立つ「Song of Increase」の例えを引き合いに出し、リーダーは人々が共に価値ある仕事をし、未来を築くための「意義の歌」を歌うべきだと語りました。
- これは、AI時代においても、人材開発が単なるサポート機能ではなく、組織の戦略的な推進力となり得ることを示唆しています。
〈日本企業への示唆・実務への応用〉
ゴーディン氏のメッセージは、変革期にある日本企業にとって多くの示唆を与えてくれます。
- 日本企業が直面する「働きがい改革」や「人的資本経営」といった課題に対し、ゴーディン氏の提唱する「人間中心のリーダーシップ」や「意義のある仕事の創出」は、具体的な方向性を示すものです。「社員が自ら進んで貢献したくなる組織文化」をどのように醸成していくかが問われます。
- 「心理的安全性」の概念は日本でも注目されていますが、単に「仲が良い」ことではなく、「建設的な対立やフィードバックを歓迎し、賢い失敗から学ぶ文化」として捉え直す必要があります。これは、イノベーションを生み出す上で不可欠な要素です。
- AIの導入が進む中で、日本企業の人事部門やリーダーは、「AIに何ができるか」だけでなく、「AI時代に人間は何をすべきか」「人間ならではの価値をどう高めるか」という問いに向き合い、人材育成戦略を再構築する必要があるでしょう。スキルだけでなく、「態度」や「人間性」を重視した採用・育成がより重要になります。
- 「Page 19 Thinking」のような、共創と改善を奨励するアプローチは、日本の組織におけるボトムアップの意見吸い上げや、部門横断的なコラボレーションを促進する上で参考になるかもしれません。
Revolutionizing Learning: 3 Ways AI Personalizes Learning Pathways(学習に革命を:AIが学習経路をパーソナライズする3つの方法)
スピーカー: Tony Jones (トニー・ジョーンズ) / CoFounder / Creative AI Academy
セッション形式: 講演
キーワード: AI活用, パーソナライズドラーニング, スキル開発, データ活用, 学習者エンゲージメント
〈セッション概要〉
本セッションでは、AI(人工知能)がいかにして学習体験を個々のニーズに合わせて最適化し、より効果的でエンゲージングなものに変革できるかについて、3つの具体的な方法論と事例を交えながら解説されました。AIを活用したラーニングプラットフォームが、学習者の既存データや進捗、興味関心に基づいて、最適な学習コンテンツやキャリアパスを提示する未来が示されました。
〈主要ポイントと学び〉
既存データの活用によるパーソナライゼーション:
- 多くの組織は既に学習者のスキルプロフィール、過去の研修履歴、業績評価、キャリア志向といった豊富なデータを持っています。AIはこれらの既存データを分析し、個々の従業員に最適な学習コンテンツや次のキャリアステップを示唆することが可能です。
- 例えば、従業員の現在のスキルセットと目標とする職務要件を照らし合わせ、スキルギャップを特定し、それを埋めるための具体的な学習リソース(社内コース、外部研修、記事、動画など)をAIが推薦します。
- トニー・ジョーンズ氏は、「チームに関する多くの既存データと、彼らが学習・開発目標に関して何をしようとしているのかをAIで結びつけることができる」と述べ、データに基づいた個別最適化の可能性を強調しました。
学習体験の個別最適化によるエンゲージメント向上:
- 画一的な学習プログラムでは、学習者のモチベーション維持が難しい場合があります。AIは、学習者の好み(動画、ポッドキャスト、記事など)、学習ペース、理解度に合わせてコンテンツの提供方法を調整できます。
- 例えば、同じ内容でも、読むことを好む人にはテキストベースの資料を、聞くことを好む人にはポッドキャスト形式のコンテンツをAIが提供するといったことが考えられます。これにより、学習者はより自然な形で知識を吸収でき、エンゲージメントの向上が期待されます。
- ジョーンズ氏は、「学習者にどのように学びたいか、どこへ行きたいかを尋ねる時代だ」と述べ、学習者中心のアプローチの重要性を訴えました。
継続的な改善とフィードバックループの確立:
- AIを活用したパーソナライズドラーニングは、一度設定して終わりではありません。学習者の進捗、フィードバック、パフォーマンスの変化といった新たなデータを継続的に収集・分析し、学習パスやコンテンツを常に最適化していくことが重要です。
- AIは、学習プログラムの効果を測定し、どの学習要素が実際の業績向上に結びついているかを特定する手助けもします。これにより、L&D部門はデータに基づいて研修プログラムを改善し、ROI(投資収益率)を高めることができます。
- ジョーンズ氏は、「AIにゆっくり動くように言い続け、そこにあるデータポイントを掴んでドロップするだけで、AIは職務記述も作成できる」と、AIによる反復的改善の容易さにも触れました。
〈日本企業への示唆・実務への応用〉
日本企業においても、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、キャリア自律を支援する上で、AIによるパーソナライズドラーニングの導入は非常に有効と考えられます。
- 多くの日本企業が保有する詳細な人事データ(勤続年数、研修受講歴、異動履歴、自己申告制度の情報など)は、AIによるパーソナライゼーションのための貴重な資源となり得ます。これらのデータをプライバシーに配慮しながら活用することで、従業員エンゲージメント(従業員の組織への愛着や貢献意欲)の向上や、リスキリング・アップスキリングの加速が期待できるでしょう。
- ただし、AIの導入にあたっては、ジョーンズ氏も指摘するように、「人々はAIが自分から学び、自分もAIから学ぶという相互の学び合いに気づいていない」という点を考慮し、AI活用のメリットや安全性について従業員の理解を深める(AIリテラシーの向上)必要があります。
- また、「既存の長年続いている手順に新たな要素を加えると、新たな問題が出てくることがある」という指摘も重要です。日本企業がAIを導入する際には、既存の研修体系や人事制度との整合性を図りつつ、スモールスタートで効果を検証しながら段階的に進めることが現実的かもしれません。
ATD ICE 2025での学びをイベントで終わらせないための「振り返り会」レポート(総括)
UMUデリゲーションツアーでは、毎日の終わりにその日の学びを深め、共有するための「振り返り会」を実施しています。ATD ICEでは数百ものセッションが同時多発的に開催されるため、この振り返り会は、自分一人ではカバーしきれない多様な知見に触れ、学びを最大化する貴重な機会となります。
DAY4の振り返り会は、浦山氏のファシリテーションのもと、これまでの3日間を含めたATD ICE 2025全体を通しての総括として行われました。参加者それぞれが最も印象に残ったセッションや概念、日本企業への示唆、そして自社に戻ってから実践したいアクションについて熱心に語り合いました。
テーマ1:AIとの共存と人間中心の価値
〈論点・問い〉
- AI技術が急速に進化する中で、人材開発の専門家として、またビジネスパーソンとして、どのようにAIと向き合い、活用していくべきか?
- AIでは代替できない「人間ならではの価値」とは何か?それをどう高めていくか?
〈参加者からのコメント・ディスカッション内容〉
- セス・ゴーディン氏の基調講演について、「人材開発はサポート機能ではなく事業の推進力」という導入があり、その視点で聴講した。「ページ19シンキング(19ページまで考え抜くこと)」という言葉が特に印象に残り、今回のATD参加で得た多くの新しい学びを、自分がどれだけ深く考え抜けるかが今後の変化に繋がると感じた。自分の偏見が壊れ、実践的な知識も得られたので、この問いを自分に投げかけ続けたい。
- 今回3回目の参加だが、AIという共通言語があり、その使い方や課題意識が世界共通で身近に感じられた。AIだけで完結するものは少なく、結局は人間が関わる必要がある。しかし、人間が本当にやるべきことをどれだけ果たせているか考えさせられ、その線引きの難しさ、自分が何をしたいのかをより問い詰める必要があると感じた。
- AIコンテンツが増えていると感じた。AIは進化するが、それと同時に戦略的思考や人間力といったAIではできない部分の重要性も増し、二極化している。日本の「思いやり」などが海外にも通じる可能性を感じ、日本ならではの強みが逆にアメリカに通用するかもしれない。
- 我々のサービスでもAI関連セッションを中心に情報を収集したが、結局は「人が中心となる」というメッセージが多かった。AIを活用しながらも、やはり人が中心となって設計していく必要がある。
- 2年前は人間の耳で英語を理解しようとしていたが、去年からAIで文字起こしをするようになり、今年はNottaを活用して精度も向上。文字起こしを元に深掘りするなど、参加しながらAIを体験し、実例を作っている。
〈明日へ繋がるアクション・今後の展望〉
- 自社に戻り、AI活用に関する具体的な研修プログラムの企画や、AI倫理に関するガイドライン策定の必要性を提言する。
- 「人間力」や「ソフトスキル」の重要性を再認識し、リーダーシップ開発やコミュニケーション研修の内容を見直す。
- AIを効果的に活用するためのプロンプトのフレームワークなど、具体的なツールや手法を組織内で共有・展開する。
テーマ2:日本企業における人材開発の課題と可能性
〈論点・問い〉
- ATD ICEで得たグローバルな知見を、日本特有の組織文化や雇用慣行の中でどのように活かせるか?
- 日本企業の人材開発部門は、経営に対してどのような価値を提供し、プレゼンスを高めていくべきか?
〈参加者からのコメント・ディスカッション内容〉
- パーソナライズラーニング(個別最適化学習)のセッションで、Z世代・α世代はショート動画世代なので、コンテンツを完璧に作り込まなくても情報はアクセスさせれば良い、という話に共感。一人ひとりに寄り添ったものが求められると感じ、人間中心の学習提供が良いのでは。
- 初参加だったが、海外の視点から日本のマーケットや人材について説明する機会が多く、視座が高まった。日米で人材課題は共通しており、海外だから進んでいるというわけではなく、我々の取り組みも価値があると認識できた。
- パーソナライズされた育成やキャリアパスは、これからの日本の人事にもっと使えると感じた。社員一人ひとりのキャリアプランや目指す人材像をよりパーソナルに設定できる可能性を感じた。
- 最先端の情報に触れるというより、本質的な重要性に改めて気づいたり、理解が深まったりする感覚だった。AIが横に広げる役割を担い、人間が深く考えるという二軸で人事はパーソナライズを実現していくのでは。実務に落とし込むには、人間理解や経営アジェンダとの接続、共感が鍵になる。
- 日本のL&Dのプレゼンスを上げていきたい。人的資本経営と言われつつも、経営者がL&Dにどれだけ興味を持ち結果を求めているかは差がある。経営にこの重要性を伝えるエビデンスを今回のATDで得たい。日本に帰って、L&Dがコストセンターではなく利益投資部門であることをプレゼンテーションしたい。そのためにも、定量的エビデンスを出すスキルを開発する必要性を強く感じた。
- 初参加だったが、新しい発見というより本質的に大事なことは日米共通だと感じた。現地のHR担当者と話しても課題はほぼ同じ(マネージャー育成、経営層の理解、人事の地位、予算など)。日本で報道される「アメリカすごい」というのは一部の優良企業事例であり、99%の企業は同じ課題を抱えている。日本で解決できれば海外でも通用する手応えを感じた。
〈明日へ繋がるアクション・今後の展望〉
- 今回の学びを社内で共有し、具体的なアクションプランに落とし込むためのワークショップを企画する。
- 経営層に対し、人材開発の重要性や具体的な施策の効果を定量・定性の両面から積極的に発信する。
- 海外の成功事例を鵜呑みにするのではなく、日本の文脈に合わせてカスタマイズし、実践していく。
- 日本の事例を海外に発信できるような取り組みも視野に入れる。
振り返り会全体を通しての総括 (ファシリテーター:浦山氏より)
浦山氏からは、「ATD ICEのセッションで直接得られる知識も重要だが、それ以上に、このような参加者同士の対話や、会場の雰囲気、ネットワーキングから得られる『生きた情報』や『気づき』こそが、グローバルなカンファレンスに参加する醍醐味である」というコメントがありました。
また、「日本企業の人材開発は決して海外に劣っているわけではなく、むしろ独自の強みを持っている。今回得た刺激を自信に変え、それぞれの現場で新たなチャレンジを続けてほしい。メインストリームのセッションだけでなく、廊下や食事の場での会話にこそ、これからの変化の兆しがある。
日本人の考え方や文化は海外からも興味を持たれており、日本のやり方が大事な場面もあるかもしれない。『ディスカバー(カバーを外す)』することで、新たな発見があるはずだ」と参加者を激励しました。
4日間を通して、AIの進化と人間性の追求、ラーニングカルチャーの変革、グローバルな視点とローカルな実践の融合など、多くの重要なテーマについて議論が深まりました。参加者からは、「多様な視点に触れることで学びが何倍にもなった」「具体的なアクションプランが見えてきた」「明日からの業務へのモチベーションが非常に高まった」といった声が多く聞かれました。
ATD ICE 2025 総括と来年への展望
4日間にわたるATD ICE 2025 ワシントンD.C.大会は、世界中から集まった人材開発・組織開発の専門家たちにとって、まさに知の祭典でした。基調講演、数々の専門セッション、EXPO、そして参加者同士の活発なネットワーキングを通じて、私たちは多くのインスピレーションと実践的な知見を得ることができました。
今年のATD ICEを振り返ると、特に以下のテーマが際立っていたように感じます。
- AIとの共進化と人間中心のアプローチ: 生成AIをはじめとするAI技術の急速な発展が、人材開発のあらゆる側面に影響を与え始めています。AIを単なる効率化ツールとして捉えるのではなく、人間の能力を拡張し、より創造的で戦略的な業務へとシフトさせるための「パートナー」としてどう位置づけるか。そして、AI時代だからこそ一層重要となる「人間ならではの価値(共感力、創造性、倫理観、リーダーシップなど)」をいかに育むか、という議論が活発でした。Day1からDay4まで、AIリテラシーの向上、AIを活用したパーソナライズドラーニング、AI倫理といったトピックが繰り返し取り上げられました。
- ラーニングカルチャーの変革と心理的安全性: 変化の激しい時代に対応するためには、組織全体が継続的に学び、進化し続ける「学習する組織」であることが不可欠です。Day3のセッションで強調されたように、心理的安全性を確保し、「賢い失敗」から学ぶ文化を醸成すること、従業員のエンゲージメントを高め、自律的な学びを促進することの重要性が改めて認識されました。
- データドリブンな意思決定と効果測定: 人材開発の施策がビジネスの成果にどう貢献しているのかを、データに基づいて可視化し、説明責任を果たすことの重要性が増しています。学習効果の測定方法や、ROIの考え方についても、より実践的な議論が交わされました。
- グローバルな視点とローカルな実践の融合: 世界の最新トレンドやベストプラクティスを学びつつも、それを各国の文化や組織の特性に合わせてどう適用していくか。振り返り会でも多くの意見が出たように、特に日本企業にとっては、独自の強みを活かしながらグローバルスタンダードを取り入れていくという視点が重要であることが再認識されました。
過去3日間のレポートでも触れてきたように(Day1レポート、Day2レポート、Day3レポート)、これらのテーマは大会期間を通じて一貫して議論され、深められてきました。ATD ICE 2025は、人材開発の専門家が直面する現代的な課題に対し、具体的な解決策と未来への希望を与えてくれる場となりました。
私たちUMU現地レポートチームは、このATD ICE 2025で得た貴重な学びやインサイトを、日本の皆様にお届けできたことを大変嬉しく思います。このレポートが、皆様の組織における人材開発・組織開発の取り組みの一助となれば幸いです。
そして、早くも次回のATD ICEに期待が寄せられています。ATD ICE 2026は、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスで開催される予定です! エンターテイメントとイノベーションの中心地であるロサンゼルスで、どのような新たな知見や出会いが待っているのか、今から楽しみでなりません。
UMUは来年もATD ICEに参加し、最新情報をお届けする予定です。引き続きご注目ください!
最速!ATD ICE 2025 現地からの最新レポート!~UMU アカデミックセッション登壇内容も独占公開~
世界最大級の人材開発カンファレンス「ATD ICE 2025」最速報告会、開催決定!
2025年5月18日から21日にかけてアメリカで開催される、人材開発に関する世界最大級のカンファレンス「ATD International Conference & Exposition (ICE) 2025」。
本ウェビナーでは、その熱気冷めやらぬうちに、現地で得られた最新のトレンド、ベストプラクティス、そして具体的なインサイトを、日本の人材育成に携わる皆様へいち早くお届けします。
関連リンク
・UMU公式サイト:https://www.umu.co/
・ATD-ICE公式サイト:https://www.td.org/ice
・アメリカATD公式サイト:https://www.td.org/
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