【イベントレポート詳細版】 AIを”操縦”せよ!UMU創業者 Dongshuo Liが語る、未来を創るAI人材育成戦略

2025年9月30日に開催された「AI Transformation Summit 2025」。そのオープニングセッションに、UMU創業者であるDongshuo Liが登壇しました。
本レポートでは、当日の講演内容とスライド資料を基に、これからの時代に必須となるAIリテラシーの本質と、企業が全社的にAI人材を育成するための具体的な方法論を、深く掘り下げてお届けします。

 

◆あなたの会社はどこにいる?会場アンケートが映し出すAI活用のリアル

セッションは、学習プラットフォーム「UMU」を活用した参加者へのリアルタイムアンケートから始まりました。その結果は、多くの日本企業の現在地を映し出す興味深いものでした。

  • 利用頻度:参加者の多くが「1日に何度も」生成AIを利用しており、日常業務に不可欠なツールとなっている。
  • 利用目的:主に「既存業務の効率化」や「アイデア出し」に活用。
  • 課題:「効果的なプロンプト作成に自信がない」と答える人が多数を占めている。
  • 求める能力:組織として「AIを創造的に活用し、複雑な課題を解決する能力」が最も必要だと考えられている。

この結果から、多くのビジネスパーソンがAIの可能性を感じつつも、その能力を最大限に引き出す方法を模索している現状が浮かび上がります。Dongshuoは、この課題を解決する鍵は「今いる全従業員をAI人材にすること」にあると述べ、セッションの本題へと入りました。

 

 

◆AI時代のリテラシーの中核は、「プロンプトリテラシー」にあり

Dongshuoは、リテラシーの進化の歴史を示しながら、現代におけるAIリテラシーの重要性を説きました。
かつて紙とペンのリテラシーから始まり、メディア、IT、デジタルリテラシーへと進化してきたように、今やAIを効果的に使いこなし、その限界を理解する能力がビジネスパーソンの新たなコンピテンシー(高い成果を生み出すための行動特性)となったと指摘します。

 

 

Dongshuoは、AI時代のビジネスパーソンにとってAIリテラシーが新たな基礎能力であると定義し、その中核をなすのが、質の高いアウトプットを引き出す「プロンプトリテラシー」であると強調しました。

 

 

優れたAI人材であるためには、AIに的確な指示を与える能力が不可欠です。その具体的な手法として、DongshuoはUMUが開発した「RSTCCフレームワーク」を紹介しました。

  • R (Role):役割 – AIに専門家などの役割を与える。
  • S (Skill):スキル – AIが持つべき専門スキルを指定する。
  • T (Task):タスク – 実行してほしい具体的な作業を指示する。
  • C (Context):文脈 – タスクに関する追加情報や背景を提供する。
  • C (Constraint):制約 – アウトプットの形式や条件を指定する。

 

 

Dongshuoは「シンプルなタスクならTCCだけでも十分ですが、挑戦的なタスクにはRSTCCの5要素全てを使うことで、AIのポテンシャルを最大限に引き出せます」と語り、このフレームワークがAIとの対話の質を飛躍的に向上させることを示しました。

 

◆AI導入を成功させる文化「Trust and Verify(信頼と検証)」

「AIが出す回答は、時々間違っている(ハルシネーションを起こす)」。
このAIの課題に対し、Dongshuoは組織文化として「信頼と検証」という原則を導入することが不可欠だと提唱しました。

  • Trust (信頼):AIは私たちの仕事に役立つ、有益なパートナーであると信じること。
  • Verify (検証):AIが生み出したアウトプットの品質に責任を持つのは、あくまで人間であると自覚し、その内容を検証すること。

この文化は、組織の階層ごとに実践すべき役割が異なり、特に重要なのがリーダーの役割です。
部下からAIを使った成果物を受け取る際に、その結果だけでなく「どのようなプロンプトを使ったのか」を合わせて確認することで、部下のAIリテラシーの向上を促し、アウトプットの質が低い原因がAIの能力ではなく、プロンプトにあることを見抜けるようになるとDongshuoは語りました。

 

 

◆あなたは”乗客”か”操縦士”か?AIとのあるべき関係

Dongshuoは、「パイロット」と「乗客」の画像を並べ、AI人材のあるべき姿を示しました。

  • 乗客:AIの答えをただコピー&ペーストするだけの受動的な使い方。AIに連れて行ってもらうだけの状態。
  • パイロット:AIが生成したインサイトやフレームワークから学び、自らの思考を加えて最終成果物を構築する能動的な利用者。

真のAI人材になるためには、後者のパイロットとしてAIを建設的・意図的に活用する姿勢です。例えば、来年の事業計画を立てる際に、ただ「計画案を作って」と指示するのではなく、「質の高い事業計画を立てるためのフレームワークを提案して」と問いかけ、AIとの対話を通じて計画の立て方そのものを学ぶ。このようなAIとのインタラクションのプロセス自体が「ラーニングジャーニー」になるのです。

 

 

◆全社的な「AI人材」育成を可能にするUMUのソリューション

では、どうすれば全従業員をAI人材へと育成できるのでしょうか。Dongshuoは、UMUが提供する「AI人材育成のための包括的ソリューション」を紹介しました。

  1. AI人材研修プログラム:「AIリテラシー基礎」から「AI x セールス」「AI x マネージャー」といった職種・シナリオ別のコースまで、体系的な学習プログラムを提供します。
  2. AI人材アセスメント:科学的な評価軸に基づき、組織と個人のAIリテラシーレベルを可視化。育成計画の土台を築きます。
  3. AI人材認定:学習の成果を公式な資格として認定し、「AI人材」としての市場価値を高めます。

 

Dongshuoは最後に、UMUのAIに関する思想として「AIは『人を代替する』ためではなく『人を強化する』ために使う」というメッセージを強調しました。
AIは、正しく責任をもって使えば、私たちに新たなスキルを獲得させ、リスキリングを可能にする強力なツールとなります。

今回の講演のためにUMUが発刊した「AIトランスフォーメーションガイドライン」には、リーダーが率先して手本を示すことの重要性が記されています。

無責任にAIのアウトプットを鵜呑みにするのではなく、AIの力を借りて自らの能力を拡張していく。そのジャーニーに、今すぐ私たち全員で踏み出すべきだとDongshuoは訴え、セッションを締めくくりました。

AIの力を借りて自らの能力を拡張し、新たな価値を創造する「AI人材」。今回のセッションは、すべての企業にとって、そのような未来を担うAI人材の育成が、今まさに取り組むべき最重要課題であることを強く印象付けるものでした。

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